米国債市場における最近の騒がしい動きは、「テーパータントラム」の可能性をめぐる議論を再燃させ、2013年に米連邦準備制度理事会(FRB)が巨額の債券購入プログラムの縮小を示唆したことで起きたのと同様の金利急騰を予想する動きがみられる。当時、このニュースは投資家を驚かせ、新興国市場に衝撃を与えた。今回、同様の事態が起きる可能性は当時よりも小さい。ジェローム・パウエルFRB議長は、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)の実施にあたっては事前に余裕を持って周知させる考えを示している。だが、これと同様に重要なことは、新興国市場が2013年当時よりも影響を受けにくくなっていると思われることだ。新興国市場にとっては、テーパータントラムそのものだけではなく、翌年の為替市場の急変も問題だった。インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は2014年の春から2015年の春までの1年間に25%も上昇した。この急上昇は、比較的弱いドル相場を想定していた(これは10年間近くニューノーマルのように思われていた)企業や各国政府の数年にわたる計画を混乱させた。