欧州連合(EU)は2020年代中に1500億ドル(約16兆3000億円)以上を投じて、次世代のデジタル産業を育成する方針を固めている。半導体・人工知能(AI)などの先端技術分野で先行する米国や東アジアのライバル諸国に対し、格差拡大の流れを逆転させるのが狙いだ。新政策の「デジタルコンパス(デジタル羅針盤)」は、新型コロナウイルス禍からの回復を目指したEUの包括的経済対策(総額2兆ドル)の一環として予算が割り振られ、2030年までにEUの技術分野での自立を大きく前進させることを目指している。欧州で、「デジタルソブリンティー(デジタル分野の主権)」と政治家たちが呼ぶ態勢を強化すべきだという認識が高まった背景には、ドナルド・トランプ前米大統領の政権下で起きた米国との貿易摩擦や、中国との地政学的な緊張関係がある。過去1年に見られた、コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)で起きたサプライチェーン(供給網)の障害や自動車産業の半導体不足は、欧州の産業界が日々の活動に不可欠な産品を世界の他地域に依存している状況に対する問題認識を、一段と高めた。 自動車産業は欧州経済の柱の一つだ。