米政府は5日、新型コロナウイルスワクチンを巡り知的財産権保護義務の国際的な免除を支持すると表明し、それまでの反対姿勢を一転させた。だが、その変更だけでは、世界のワクチン生産を促進する大きな効果は得られない。そのためには、さらに一致団結した野心的な協力が必要となる。製薬業界は免除に反論してきた。知的財産権の保護がイノベーションを促すことも理由の一つだ。ただし、その点では業界の主張は根拠が弱い。通常の製薬業界における知的財産のメリットが何であれ、目下の状況は平常ではない。世界の迅速なワクチン接種は、通常の市場インセンティブより優先されなければならない。だが残念なことに、世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定(知的財産権の貿易的側面に関する協定)における一時的な保護義務免除は、恐らくそれ自体では生産拡大にさほど役立たないという点で、業界の主張は正しい可能性が高い。