ジョー・バイデン米大統領が欧州各地で相次ぎ首脳会談に参加する中、ドナルド・トランプ前米大統領の破壊の記憶は薄れ始め、その穏やかな外交ショーは威厳ある姿を取り戻しつつある。おなじみの儀式が復活し、イングランドのコーンウォールでは、会談が開かれ、コミュニケ(共同声明)が作成され、全てが調和と光に満ちていた(英国本土から北アイルランドへのソーセージ出荷ルールを巡る欧州内の小さな論争は除く)。ブリュッセルでも同様の状況が見込まれている。米国も、西側諸国も、多国間主義も戻ってきた。全てが順調だ。確かに、難点もあった。気候変動活動家は、温暖化ガス排出量を大幅削減するための壮大な提案を歓迎したが、今年の主要7カ国(G7)のコミュニケに石炭の使用を禁じる措置が盛り込まれなかったことに懸念を示した。保健対策を推進する人たちは、新型コロナウイルスワクチン10億回分を貧困国に提供するとの公約を歓迎したが、公約はワクチンの配布問題には対処しておらず、必要量をはるかに下回っているとくぎを刺した。