住職とライターという異色の“二足のわらじ”を履く吉州正行さん。檀家との付き合いを通じてさまざまな家族と対話してきた経験から、相続問題に関する記事の執筆、講演なども数多く手掛けている。今回は、そんな吉州さんに聞いた、スムーズな相続の決め手を紹介。自身も投資をしているという吉州さん自身のおカネ観も教えてもらった!(ダイヤモンド・ザイ編集部)
永平寺での修行を経てフリーマガジンの編集者に!
両極端の生活を経験し、身の丈の大切さを知る!
――お坊さんなのにライターも兼業されているというのは、とてもユニークな働き方ですね。
住職・ライター 吉州正行さん●駒澤大学仏教学部卒業。2002年から約2年、曹洞宗大本山・永平寺で修行。その後、リクルートで広告制作・編集に携わる。2021年より埼玉県・正明寺で主専住職。相続やお金の悩みを「家族の対話」という視点で考える活動をライフワークとし、「東証マネ部」での連載やメディア出演、金融機関主催の講演を通じて発信している。
吉州さん 実家が曹洞宗のお寺なので、住職の仕事を受け継ぐのは、生まれたときから決まっていました。なので、2002年に駒澤大学の仏教学部を卒業してから、曹洞宗の大本山である永平寺(福井県)に行って約2年修行をしています。その後、すぐ実家に戻る選択肢もあったのですが、父がまだ現役だったので、社会勉強をさせてもらうつもりでフリーライターになったんです。
――フリーの期間は短かったとか。
吉州さん フリーになってからしばらくして、リクルートの当時話題だったフリーマガジン『R25』の編集長から、編集部に入らないかと誘われ、願ってもない機会だと思って就職しました。
実は、永平寺で修行していた約2年の間、世の中から完全に隔離された生活をしていたので、戻って「雑誌がタダで読めるようになったんだ」と驚いたんです。まだSNSはおろか、Webメディアもそれほど普及していない時代。フリーペーパーは最先端メディアだったので、その仕事に携われるのはとても嬉しかったですね。
――山奥での修行の日々から、いきなり東京での編集者生活。ギャップが大きかったのではありませんか?
吉州さん はい(笑)。僧侶の修行は、あらゆる雑念を取り払って仏道に専念するものなので、物欲や金銭欲はいっさい振り払わなければなりません。そもそも修行中は、原則的におカネを稼ぐことも、使うこともできませんからね。
そんな生活を2年もしていたのですから、反動はかなり大きかったですね。当時はまだ華やかな時代の名残がありましたし、リクルートは銀座のど真ん中にあったので、ライターや編集者仲間と酒を飲んだり、流行の服を買ったりと、消費文化を満喫していました。いま思うと、「禅寺の静寂」と「銀座の煩悩(ぼんのう)」という両極端の生活を体験できたことは、バランスの取れた経済感覚や人生観を養ういい機会だったのかもしれません。
――バランスの取れた経済感覚って、どんな感じでしょうか?
吉州さん 過度な贅沢はせず、かといって倹約し過ぎることもなく、ほどほどの暮らしをすることだと思います。仏教の教えの1つに「小欲知足」(欲は小さくし、足るを知る)というものがあります。自分にはどれくらいのおカネや物があれば十分なのかを知り、身の丈に合った生活をするのが望ましいという教えです。両極端な生活を体験し、そんな教えの意味を身をもって感じられたことは、いま僧侶として、多くの人の悩みに応えている自分の大きな糧になっていると思います。
――なるほど。ちなみに住職は、資産運用はなさっていますか?
吉州さん はい。4年前に父が亡くなり、持っていた株を受け継いだので、そこから株式投資をしています。投資に関しても「小欲知足」で、儲けるというより、投資先の会社を応援するつもりでやっています。
私が銘柄選びで大切にしているのは「世の中に安心を提供している会社か?」「“おかげさま”の循環を大事にしている会社か?」「嘘のない対話をしている会社か?」の3つです。この基準に沿って、世の中になくてはならない社会インフラ系の会社や、利益を社会にしっかり還元している会社、適切なIR活動を行っている会社の株を中心に買っています。
――取引先の証券会社は?
吉州さん いまはネット証券で株を売買する人が多いと思いますが、私は対面の証券会社で取引しています。父から株とともに、実は証券会社の担当者を受け継いだので、その方のアドバイスを頼りにしながら銘柄の選定や売買を行っています。
――株だけでなく、お父さんが頼りにしていた証券会社の担当者まで受け継いだというのは、とても興味深いお話ですね。
吉州さん 資産は金銭的な価値だけでなく、それを築き上げた人の想いが込められているものです。そうした想いを実際に父と向き合ってきた証券会社の担当者の方から聞き、その物語も大切な資産の一部として、しっかり継承したいと思いました。それに、人を通して株式市場と接するのも、いいですよ。第三者の視点は頼もしいものです。








