少額訴訟制度を悪用し
架空請求の手口も

 これはレアケースなので詳しく紹介させていただいたが、一般的にあり得る例で警戒していただきたいのは、むしろ少額訴訟手続きを悪用した架空請求詐欺である。

 少額訴訟手続きとは、金銭を巡る少額のトラブルで解決に至らず訴訟になった場合、長期を要しないように、その日のうちに即断即決する制度だ。バイトの賃金不払いや個人間の金銭貸借、アパートの敷金問題などに適用される。

 1998(平成10)年に設けられ、当初は30万円以下に限定していたが、利用が多かったことから現在は60万円以下に枠を拡大している。詐欺師たちはこれに目を付けたわけだ。

 多いのは、アダルトサイトや出会い系サイトなどの運営会社が、過去の利用者などを相手に60万円以下の金額を支払うよう、提訴する手口だ。

 裁判所から提訴された旨の連絡である内容証明が自宅に届き、慌てふためいて各方面に問い合わせて、詐欺であることに気付くケースもあるが、詐欺と見抜いて放置したことで結局は被害に遭ってしまうのだ。

 前述したが、自宅に内容証明が届いたということは、詐欺師は氏名・住所を含む個人情報を握っているということだ。そして、放置することで判決が確定してしまう。さらに怖いことには、詐欺師たちはこうした個人情報を融通し合っているという点だ。

 実際にある男性が「出会い系サイト」を利用したと架空請求の少額訴訟を起こされ、内容証明が届いたため応訴したケースがある。男性は「身に覚えがない」と争う姿勢を示したため、詐欺師側は訴訟を取り下げた。