『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「文章が書けない」コンプレックスを解消する意外な方法Photo: Adobe Stock

[質問]
 文章が書けません。

何も出てこない時は幼児の話し言葉レベルに戻って文章を作ります

[読書猿の回答]
 私も書けません。なので今書いているもの、書かなきゃならないものに全く使えなくても、言葉がひとつでも思い浮かんだ時は奇跡だと思ってメモをとります。一度書き出したことがあるものは、後で必要になった時に出てきやすいからです。

 デフォルトでは文章が書けないなら、奇跡が起きていない状態では、ほとんど言葉の話し始めのレベルに戻ります。つまり二語文です。

「アタマ 痛い」「文章 書けない」というレベルの言葉で、書きたいこと(WTW:want to write)と書くべきこと(MTW:must to write)を順不同で書き出します。

 そうして書き出したものを眺め、読み返して、関係ありそうなものを線で結んでいきます。この段階では順序や構成を考えるというより、関連を見つけ出し、あるいは「発明」して、結びつけることに専念します。線で結んでいるうちに、書き足したいことがでてくるので、これも二語文で書き出し、更に線で結んでいきます。

 ある程度、線で結び終えたら、「それぞれの結びつきがどんな関係なのか」を線に添って書いていきます。要するに『独学大全』でも出てきたコンセプトマップなんですが、書きたいものと書くべきものが図解できれば、後はこれを言葉に翻訳していきます。いきなり文章化はきついなら、口頭説明→音声入力がいいです。

 こうして、まがりなりにも(化け物のようなものかもしれませんが)言葉の塊ができあがります。あとはこれを添削していきます。文章を書く作業のうち、0を1にすることが最も難しい、と思います。できそこないの書き物であっても、とにかく目の前にでっち上げることができれば、それを改善することはずっと易しい。

 ここでの添削は、上手な文章に直していく、というより、言葉の塊の中から、自分が言いたかったものを見つけていく作業です。「これは!」という箇所や、「これなに?」というところに下線を引くところから始めましょう。線を引いたものを集めて、これで何が言いたかったのかを、もう一度、言語化します。

 自分の経験では、コンセプト・マップ→口頭説明や、言葉の塊→下線引き→口頭説明といった、〈表現形態〉を変換する際に、自分の思考のようなものが、ようやく宿る気がします。

 ちなみに今、私やあなたのように全く書けない人のための本『文章大全』を書いています。来年にはお届けできると思います。