『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「努力しても天才には勝てない…」劣等感を感じる人がやるべきことPhoto: Adobe Stock

[質問]
 こんにちは。読書猿さんのブログを見て独学の楽しさを知りました。勉強していく中で疑問に思ったことがあります。自分の好きな分野で誰にも負けないぐらい詳しくなりたいのですが、いくら勉強しても、上には上がおり、その道の専門家やプロ、大学教授がいます。いくら勉強を続けても、好きな分野を仕事にして、毎日研究をするそのような人たちほど好きな分野に詳しくなれない自分に少し劣等感を感じています。読書猿さんは独学をする中で劣等感を感じたりはしないでしょうか? 既出の質問でしたら申し訳ありません。回答していただけると嬉しいです。

すごい人に追いつけないからといって、私たちが学ばない理由にはなりません

[読書猿の回答]
 自分よりもっと知っている人また賢い人がいることは常にいたるところで感じます。

 それは私がやっているフィロロギー(フィロス(愛する)」+ロゴス(学、言葉))の前提であり、私が願ってやまないことでもあります。

 勿論、独学であっても、ある分野やテーマについて他の追随を許さないところに達することは(誰にでもできることではありませんが)可能だとは思います。私たちが名を知る独学者、たとえば牧野富太郎や南方熊楠あるいはライプニッツやルソーはそうした人たちでしょう。

 私が彼ら独学の先人たちから学び知ったのは、機会や環境が与えられなかったとしても/奪われたとしても、人は学ぶことをやめられないということです。

 同様に、誰かに勝てないことや追いつけないことは(マンガ『3月のライオン』で島田八段が言っているように)、人が学ぶことをやめる理由にはならないと思います。

「宗谷は『天才』と呼ばれる人間のごたぶんにもれず、サボらない。どんなに登りつめても決してゆるまず、自分を過信する事が無い。だから差は縮まらない、どこまで行っても。しかし『縮まらないから』といって、それがオレが進まない理由にはならん」

 知の頂に立つ人は確かに敬するに値しますが、その頂の高さはすそ野の広がりによって支えられています。知のエコシステムは知的営為に馳せ参じるすべての人から成り立つのです。

 以下は蛇足ですが…

 正直なことを言うと、私はこうなろうと願ったり、戦略を立てて努力したりして、今のようになった訳ではありません。ただ振り返ってみると、若い頃こうなりたいと思っていた者よりむしろ、「こういう人がいてくれたらいいなあ」と思っていた者に近づいている気がします。

 もっと正直に言うなら、今やっているようなことは誰かに押し付けたかった。どれだけ頑張っても、どの専門領域からも受け入れられないし、浮かばれないなと思っていた訳です。

 ただ「いてほしい」と願っていたように、ニーズがあることも薄々ですが知っていました。世界に最低一人は(自分のことですが)必要としている人間がいたからです。

 そしてそうなるための方法も、ある程度見えていました。図書館という認知増強装置に下駄をはかせてもらえばいいわけです。