シンガポールは今月、新型コロナウイルス対策で節目を迎えた。ワクチン接種完了者が人口の8割を超えたのだ。だが政府は、節目越えに連動する経済再開計画の実施に待ったをかけた。
前回、制限措置の一部を解除したことで、1日当たりの新規感染者数が数百人まで増え、病床不足の懸念が高まっているためだ。
ワクチンの普及は待望の正常化をもたらすはずだった。だが厳格な対策の徹底でウイルスを封じ込めてきたアジア・太平洋諸国にとって、ワクチン接種後の世界に足を踏み入れることは一筋縄では行かない。
深刻な感染拡大を防いできた日本や韓国、オーストラリアなどでは、当局者も市民も低水準の感染者・死者数に慣れている。感染の抑え込みに比較的成功してきた実績があるため、市民はワクチンの供給を首を長くして待つ間も制限措置を守る傾向が強かった。
ここにきてワクチンの供給体制は整った。シンガポールは接種率でアジア・太平洋地域の先頭に立つ。日本や韓国、オーストラリアも大きな後れを取っているわけではない。11月までには70~80%に達するとみられ、米国や英国、一部の西欧諸国の水準に迫るか、追い抜く勢いだ。