足元の価格を抑えるために
安易に飛びついてはいけない取引とは
今までの経験上、市場の価格が上昇すると、現物サプライヤーや金融機関から「今よりも安い価格で原材料を購入できますよ」という提案が来ることがある。
例えば、足元9000ドル程度の銅を8000ドルで購入できるといった提案だ。しかし、これは足元の価格を低く抑えるために、特殊な条件が付加されている取引であることが多い。
なぜこんなことが可能かといえば、足元の価格を低くするために、何らかの別のリスクが内包されているからだ。
例えば、「8000ドルで1年間購入できるが、市場の価格が1度でも7000ドルまで下がった場合、購入価格は1万ドルに上昇する」という価格上昇のリスクを取らされているケースがある。
また、「8000ドルで1年間購入できるが、市場の価格が7000ドルまで下がった場合、契約期間が2年間延長される(市場の価格が7000ドルなのに8000ドルで購入しなければならない)」といった期間のリスクを内包する場合もある。
このほか価格上昇、期間のリスクの両方を取らされているケースなどさまざまで、裏には複雑な金融商品が用いられていることが多い。
その内包されるリスクが妥当であり、制御可能な範囲のものであればこうした取引を否定するものではない。
しかし、当初想定していた予算レートよりも低いレートで購入するために、自力でコントロールができないリスクが内包されている場合、多方面からの検証と確認が必要になる。
問題は、こうした取引を実行あるいは提案を受けたことがある担当者がそれほど多くないため、チェック機能が十分に働かないことだ。
なぜこうした商品の知識を有する担当者が少ないかといえば、リーマンショックが発生時に複雑な仕組みの金融商品で大きな損失を被った企業や金融機関は多く、売り手も買い手もこの市場から撤退してしまったからである。
明らかに使い方を誤ったことによる損失発生だが、その結果、商品を販売している側も購入する側も何かあったときのリスクがイメージできず、ある意味全く悪気なくこうした価格体系で商品を販売・購入してしまうことがある。
特に現在のように価格が急騰して当初予算レートを上回ると、購入側担当者の「ディストレス・リスク(絶望リスク)」が顕在化しているため、こうした提案に飛びつきやすい。
リスクを回避するために導入した取引で、さらにリスクが大きくなることは絶対に避けるべきだ。今は粛々と価格上昇に対応し、その後来るべき価格下落と「その次の上昇局面」に備える必要があるだろう。



