その相場が世界の景気先行指標とされ、ドクター・カッパーと呼ばれる銅。5月に史上最高値を付けた後は、おおむね9000ドル台前半で推移している。買い材料と売り材料が交錯し、綱引きを続けている。ただ、中長期での需要増加期待は強く、今後1万ドルを視野に入れた動きとなるだろう。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
EV・再エネ期待で5月に史上最高値
6月は米利上げ見通しの前倒しなどで反落
銅相場は、5月10日に1トン当たり1万747.50ドルの史上最高値を付けた後、やや下落し、6月後半以降は、9000ドル台前半を中心に推移している。9000ドル割れの水準や9000ドル後半の水準は長続きしない。
5月に史上最高値を付けた背景には、各国での巨額の財政支出や非常に緩和的な金融政策継続はインフレを招くとの観測から、インフレに強い資産であるコモディティー(商品)全般への投資意欲が高まったことがあった。
特に電導性に優れる銅に対しては、EV(電気自動車)の普及や再生可能エネルギーの導入による需要増加への中長期的な期待が高まった。また、産銅国のチリやペルーでの供給不安も強まっていた。
しかし、6月に入ると、徐々に弱気材料が出始める。