景気減速の中国が
政策変更した背景とは
中国は新型コロナウイルスの感染拡大からいち早く抜け出し、コロナ禍での世界経済をけん引してきた。そして中国の景気動向は、あらゆる商品価格に影響を与えている。
その中国の景気が減速している。7月に発表された中国の4~6月期の実質GDP(国内総生産)は、前年比+7.9%と前期(1~3月期)の+18.3%から減速。年初来の実質GDPも+12.7%(+18.3%)と伸びが鈍化した。
中国での足元の経済成長ペースの減速は、昨年から続くコロナ対策が一巡し、今年7月の中国共産党結党100周年記念行事を終えて過剰な景気刺激の必要性がなくなったことが大きな要因といえよう。むしろ、中国政府の軸足は、昨年から発生している住宅セクターの過熱ぶりをいかに抑制するかに移ったと考えられる。
中国のGDPの構成は、個人消費が4割弱、投資が6割だ。新型コロナの影響による景気減速を回避するための刺激策は、その効果を考えると投資に偏らざるを得なくなる。
経済への波及効果が大きい住宅セクターを刺激することは、経済対策の常道だ。しかし先進国で見られたように、人口動態がピークアウトした後の住宅バブル崩壊は、その影響が大きい。長期政権を目指す習近平国家主席は、「バブルを作った後に処理をするのも自分」と認識しているとみられ、だからこそ住宅セクターの過熱ぶりに手を打ち始めていると考えられる。
世界経済をリードしてきた中国は、人口動態のピークアウトという構造的な経済成長ペースの減速に直面しつつある。これに対応するため、中国共産党は2人っ子政策を修正し3人まで子どもを持つことを認めた。さらに学習塾の非営利団体化、習近平思想教育の義務化、企業の国有化や富裕層の資産を再配分、中所得者層の拡充を打ち出した。
中国は、依然として経済が急拡大する「人口ボーナス期」にあると考えられる。国連の推計によると、中国は2010年に経済成長のピークを迎え、32年頃に高齢者と子供に対する生産年齢人口の数が2倍を切る「人口オーナス期」に突入する。これにより、中国は構造的に経済成長が難しくなると予想される。通常、新興国が先進国化すると、それに伴って工業化が進む。そして、より子どもの高学歴化が進んで子ども1人あたりの教育費が上昇するため、少子化が進みやすくなる。