普段は目立たないサプライチェーン(供給網)ほど、グローバル化の裏付けとして象徴的な存在は他にない。国内外の生産活動が連携するようになったおかげで、消費者は限りなく多様な商品をいつでも手に入れられると考えるようになった。こうした利便性は今、危機に瀕している。2021年のサプライチェーン危機は、2008年の世界金融危機と同様にグローバル化の後退を促している。今回の危機には、3つの大きな要因がある。新型コロナウイルス感染症、気候変動と地政学だ。世界中の自動車メーカーが減産を余儀なくされた半導体不足にも、こうした要因が一部作用した。新型コロナ感染症の流行を受けた消費者向け電子機器の需要増が、自動車メーカーに向かうはずだった半導体を吸い上げ、感染対策の影響でマレーシアでの生産が滞った。極端な天候を受けて、テキサス州では半導体工場の生産が停止し、台湾でも同様の事態が懸念された。そして、ピーターソン国際経済研究所のチャド・バウン氏によれば、米国の追加関税と輸出規制が中国人バイヤーによる買い占めを誘発し、米国内の半導体在庫が減少した。
サプライチェーン危機、グローバル化は後退へ
低コストで多種多様な商品供給の時代は終わりか コロナと気候変動・地政学の影響で
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