インドから出航した貨物船「MVバンテージ・ウエーブ号」のダン・サンドゥ船長(68)は体調が悪く、自室で休んでいた。海の上で40年を過ごしてきた船長にとって、これが引退前の最後の航海だった。「心配するな。大丈夫だから」。妻に4月に送った電子メールが最後となった。先月、船はアラブ首長国連邦(UAE)沖にいた。サンドゥ船長は亡くなり、遺体は船内の大型冷凍庫で保管されていた。半年もの間、遺体は船員の食料近くに保管されながら何千マイルもの航海を続けた。船長の母国ルーマニアに遺体を届けなくてはならなかった。船が遺体の引き取りを求めたのはこれで13カ国目だった。これまでは全て断られていた。サンドゥ船長の苦難は外交問題に発展していた。「父を家に帰したいだけだった」と息子のアンドレイさんは言う。「2021年にどうしたらこんなことが起きるというのだ」。アンドレイさんも別の船で船長を務めている。
海で命落とした船長、半年も船内の冷凍庫に
遺体を陸に下ろすことを各国で拒否され続けた
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