新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染拡大を受け、世界各地で再び渡航制限を導入する動きが広がっている。ようやく持ち直しつつあった海外への渡航に新たな障害が立ちはだかっている。

 米国では、自国民も含め、入国者の検査要件を厳格化する。日本とイスラエルは当面、外国人の入国を事実上禁止する。欧州やアジア諸国でも、外国からの渡航者に対して追加の検査や自己隔離など新たな規定を導入する国が増えている。

 当初は、オミクロン株が最初に確認されたアフリカ南部からの渡航者の入国を急きょ禁止・制限する国が相次いだ。だが、オミクロン株による感染が世界各地で確認されていることを受け、入国制限の対象国・地域も拡大している。

 全面的な入国禁止まで踏み込みところは少ないが、旅行者にとっては新たな制限措置によって計画の策定が難しくなり、追加検査が必要となれば費用もかさむ。自己隔離ルールが再導入されれば、とりわけ出張は現実的な選択肢ではなくなる。ホリデーシーズンの本格化を控え、旅行者は訪問先で新たなルールにより身動きできなくなる事態も想定せざるを得ない。

 韓国は外国からの渡航者に10日間の自己隔離を義務づけると発表した。当局者によると、これを受けて、来週700人余りが参加してソウルで開催予定だった国連の平和維持活動に関する会議はバーチャール開催に切り替えられた。

 聯合ニュースは、2年ぶりに実際のコンサートを開くためロサンゼルスに滞在中の人気K-Popバンド「BTS(防弾少年団)」が、隔離要件のため、来週ソウルで予定されている音楽賞のイベントに出席できないと報じた。BTSは米国での最後のコンサートを終えて、3日に帰国する予定だったが、韓国ではその日から新たな制限措置が導入される。BTSの代理人のコメントは現時点で得られていない。

 スイスも20カ国余りを対象に、渡航者に到着後10日間の自己隔離を義務づける。米国からの入国者は当面、自己隔離を免除されるが、英国など複数の欧州諸国からの渡航者には適用される。スイスの銀行関係者はようやくチューリッヒ、ジュネーブとロンドンといった金融拠点の往来を再開したばかりで、幹部は出張計画に狂いが生じていると話している。

 スイスではまた、毎年1月にダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)が開催される。昨年は開催が見送られていた。主催者側は現時点で、来月のイベントに渡航制限がどう影響するかとの問い合わせに応じていない。

 米金融大手JPモルガン・チェースは、ロンドンで来週予定していた年次イベントを中止した。同行はこれまで、テムズ川沿いの歴史的建築物を会場として、毎年大口顧客をもてなすのが恒例だった。

 昨年外国からの訪問者の受け入れをほぼ停止していたアジア諸国でも、再び渡航制限を導入する動きが広がっている。日本スケート連盟は2日、12月初旬に大坂で開催予定だったフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルを中止すると発表した。渡航制限により外国人選手の参加が難しくなったためだ。

 欧州では、渡航制限はそこまで厳格ではないものの、多くの国で制限が強化された。例えば、フランスは欧州連合(EU)域外からの渡航者に対し、ワクチン接種者も含め全員、陰性の検査結果の提示を義務づける。これまではEUが承認したワクチンの接種を済ませていれば、飛行機搭乗前の検査は必要なかった。

 南アフリカ共和国が初めてオミクロン株の存在が確認されたと発表した11月25日以降、国際便の予約に関するデータはまだ広く入手できる状況にはない。だが、欧州・アジアでのホテル予約状況に関する初期データからは、とりわけ欧州で再び落ち込んでいることがうかがわれる。

 11月28日終了週に欧州のホテル予約件数は2019年の同時期と比べて21%減少した(YipitData調べ)。これに対し、10月下旬時点では19年比で2%増加していた。オミクロン株を巡る懸念が浮上する以前から、欧州ではデルタ株による感染が広がっており、予約状況は減少傾向にある。

 2020年3月以降、外国人の入国をほぼ禁止してきた米国は、ワクチン接種を完了した欧州などからの渡航者を対象に、11月初旬に受け入れを再開した。これにより、コロナ禍で大きな打撃を受けた旅行業界には大きな追い風が吹いていた。全米旅行産業協会によると、これまで入国受け入れが禁止されていた対象国・地域は、2019年に外国から訪米した観光客の53%を占める。

 バイデン政権はそうした禁止措置を再導入していないが、外国からの渡航者に対して新たな規定を設ける。ただ、アジアや欧州の一部が導入した措置ほど厳格ではない。政権高官によると、新たな規定では渡航者に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず、出発前1日以内に取得した陰性結果証明の提示を義務づける。現行では、ワクチン接種者は72時間以内に陰性証明を取得する必要があった。入国に伴う新たな規定は、米国籍の市民および外国人の双方に適用される。

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