だが、「専門家に従う」という論法は、リーダーシップの放棄と捉えられるリスクと表裏一体だ。
「専門家に従う」といえば、あたかも完全無欠の対策が科学的に示されるように聞こえるが、日常生活の不便はもちろん、リモート教育による学力の低下など、感染防止策にはコストが伴うのが現実だ。
本来であれば、感染拡大のリスクとてんびんにかけて感染対策の度合いを決めるのは、政治の役割だ。
ブルッキングス研究所のガルストン上級研究員は、「日常生活を取り戻すために、ある程度のリスクの高まりを有権者が受け入れるというのであれば、(医療の)専門家の意見だけで答えを示すわけにはいかなくなる」と指摘する。
ましてコロナ禍は前例のない感染症であり、常に専門家が正解を持ち合わせているわけではない。実際に、これまでのCDCの指針には、感染者の自粛期間が急に変わるなど、有権者の混乱を招く局面が少なくなかった。
感染者減少でも支持率は上向かず
中間選挙を意識、共和党が攻勢
米国には、専門家の権威を疑う反知性主義の伝統がある。バイデン政権の“専門家頼み”が行き過ぎて、有権者の思いと距離が開けば、政府の態度は高圧的に受け止められやすくなる。
中間選挙で議会多数派の奪回を目指す共和党は、ワクチンやマスクの有効性を問うというよりも、これを政府が義務づけることへの批判を強めている。
さらには、民主党の有力な政治家が公共の場でマスクを着用していない写真が拡散する事例が相次いでおり、「民主党の偽善」が批判される場面も目立ってきた。
一方でバイデン政権には、拙速に感染対策を緩めたくない事情がある。
昨年7月4日の独立記念日にバイデン大統領はコロナ禍の制圧に成功したかのような発言を行ったが、その後、バイデン氏をあざ笑うかのようにデルタ株の感染が広がり、大統領の支持率が低下する一つのきっかけとなった。
対策の手を緩めて再び感染が拡大する二の舞いにしたくないということだろう。
新規感染者が減る中でコロナとの共存のめどがついてきたのか、米CBS社が2月8~11日に行った世論調査では、コロナをめぐる状況が「良い方向に向かっている」との回答が47%と、1月調査の36%から大幅に回復、「米国は良い方向に向かっている」とする回答も1月調査の26%から33%へと増えている。



