ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、頭がおかしくなっているのだろうか。ほぼ間違いなく、そうではないだろう。同氏はウクライナ侵攻でひどい計算ミスを犯した。しかし歴史を振り返れば、侵略者側の考えでは戦争がもっと簡単に片付くはずだったのに、実際にはそうならなかったという例は、枚挙にいとまがない。人間というのはそういうものだ。独裁政権や軍事政権ではなおさらだ。第1次世界大戦を招いたドイツ皇帝、第2次世界大戦に踏み込んだ日本の東条英機内閣、朝鮮戦争の際の北朝鮮の金日成氏、アフガニスタンに侵攻したソ連、イランやクウェートとの戦争を起こしたサダム・フセイン氏などの例を思い出してみるといい。米国も同様の失敗を経験した。2003年3月のイラク進攻の前、一部の米当局者はその年の秋までには、投入兵力の3分の2が帰国できるようになり、戦費は1000億ドル(現在のレートで約11兆6000億円)以下にとどまると予想していた。しかし実際には13万~17万人の米兵がさらに約7年間イラクに駐留することになった。イラクでの米国の戦費は最終的に1兆ドルを大きく超え、勇敢な米兵4500人がイラクで命を落とした。
【寄稿】怒れるプーチン氏、気はたしか
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