石油輸出国機構(OPEC)とロシアを筆頭とする主要産油国で構成する「OPECプラス」が小幅な増産を続ける従来方針を堅持したことで、ホワイトハウスは自ら問題解決に乗り出した。今回はかなり大胆に打って出た。米政府は3月31日、向こう半年間にわたり、戦略石油備蓄(SPR)を日量100万バレル(世界需要の約1%に相当)放出すると発表した。放出量は合計1億8000万バレルで、史上最大の規模だ。これに先立ち、OPECプラスは5月に合計で日量43万2000バレルの増産を続けることを早々に決定。引き上げ幅の拡大を見送っていた。バイデン米政権の断定的な文言は残念なところが多い。例えば「日量100万バレルの備蓄を向こう30日間にわたり放出することを承認する」とし、「さらにこれを5回繰り返す選択肢も維持している」とすることもできた。SPRが放出されるという可能性だけでも価格を抑制する効果があることを踏まえれば、今後の計画を明かさずにおけば、将来的に選択肢を温存することができただろう。ロシアの原油供給がどれほど、またどのくらいの期間にわたって市場から消えるのか完全には読み切れないことからも、余地を柔軟に残しておく方が賢明にみえる。国際エネルギー機関(IEA)は3月、市場に出回るロシア産原油が4月以降に日量300万バレル規模で減る可能性があると分析していた。一方でOilXがまとめたデータによると、ロシアの原油生産の落ち込み幅は、3月27日時点で同月初旬と比べて日量28万バレルにとどまった。