――筆者のヤロスラフ・トロフィモフはWSJ外交担当チーフコレスポンデント ***  旧ソ連の当局から迫害を受けていた若き詩人、ヨシフ・ブロツキーは1972年に米国に逃れ、その後ノーベル文学賞を受賞した。旧ソ連時代のキエフ(ウクライナの首都キーウ)では、ウクライナの知識人が「サミズダート(地下出版)」のブロツキーの詩集を交換しては極秘の集まりで朗読していた。  だが、双方の関係は相思相愛とはいかなった。ブロツキーはウクライナが独立国家として存在してから1年足らずの1992年、朗読会で「ウクライナの独立へ」と題した新たな詩を披露した。