うまくコミュニケーションできないことからくる孤独感、低い自己肯定感、SNSによる誹謗中傷やバッシングなど、今、生きづらさをかかえる人が増えています。そんな中にあって、毎日を心安らかに、快適に過ごしていくためには、どうすればいいのでしょうか? 発達障害(ADHD)、うつ病など、生きづらさを抱えながらも精神科医として活躍するバク先生は、ツイッターでのつぶやきが共感・絶賛され、今、人気急上昇中。本連載では、バク先生の初の著書『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす 生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』(ダイヤモンド社)の中から、生きづらさを解消するための実践的なヒントをご紹介してきました。読者から寄せられたお悩み相談に対して、バク先生が答えるアドバイス編の第6回をお届けします。
休日にも、友人の職場の愚痴を聞かなければいけない?
皆様、こんにちは。バク@精神科医です。
この世の中には色々な悩みがあると思います。それでも見方をちょっと変えてみたり、様々な視点を持つことで「そこまで悩まなくても良かったかな?」と思えるようになるかもしれません。
本連載が、皆様のストレスを少しでも減らして、笑顔やリラックスのためのヒントになれば幸いです。今回の質問はこちらです。
質問:休みの日は友達と楽しいことをして嫌なことは忘れたいのに、そんな休日に友人の職場の愚痴を聞かなければならない状況に、どのように対処すればいいでしょうか? 返答にも気を遣い疲れてしまいます。
休みの日は楽しいことをしてスッキリしたいですよね! でも、一緒に行く人が愚痴を言いたいモードだと、中々スッキリできないお気持ちもわかります。
ここで質問内にある「友達」さんは毎回職場の愚痴を言いたいモードなんでしょうか。たまになら今日は聞いて今度は楽しく遊ぼう……と思えるかもしれませんが(それでもその休日は残念ですね)、毎回絶対愚痴を言いたいタイプの方ならば、休日に一緒に出かけること自体をやめた方が良いと思います。
冷たいと言われそうなのですが、やはり友人同士でもある程度の譲り合いは必要ですし、片方が極端に我慢しないと継続不可能な関係は長続きしません。
実際問題、質問者さんは返答に困っておられます。この短い文からではご友人との関係全てを私は理解することができませんが、いただいた情報だけから考えると「どのように対処すればいいか?」への回答は「その人と貴重な休みに出かけない」になります。
下手なアドバイスをはしない
精神医療にたずさわっている人間でも、患者さんの逃げる場所のない悩み(夫婦関係が破綻しているけれど金銭問題があり離婚はできないとか、育児で疲弊しているが保育園などを利用できない、など)は、簡単完璧、即納得可能な解決方法は存在しません。
そのため、最初はただひたすら傾聴するしかありません(患者さんがある程度、気持ちを吐き出し切って、状況をご自身である程度客観視できるようになった後でないと、福祉の介入なども提案してもうまく受け入れられにくいです)。
質問者さんの困ってしまう状態も、似たような状態ではないでしょうか。
職場に不満がある場合、ものすごく簡単な解決方法は「その職場を辞める」ことですが、無責任にその友人に退職を提案しても「じゃあ、次が見つかるまでどうやって生活しろっていうの」とか「人間関係に困ってるだけだし、給与とか仕事内容には文句はないから辞めたくない!」と言われたら、返す言葉が見つからなくて当然なのです。
多分、すぐに第三者が提案できる解決策はもうとっくにその人が試しているか、諦めている方法ばかりだと思います。
しかし、私が患者さんからこういった内容の相談を聞くのと、質問者さんが聞くのとでは大きな違いがあります。それは私が患者さんから相談されるのは仕事であり、質問者さんは仕事ではないという点です。
仕事でもないことにできる限り善処しようとするのは、非常に優しい心だと思います。ですが、こういう話は対応がとても難しい上に、下手なアドバイスをして相手が質問者さんの提案で動いた後、「とんでもない状態になった!」と怒ってこられても、質問者さんは責任の取りようがありませんよね。
今までの付き合いからして「自分が聞いてあげなきゃ!」と思う場合は、「下手な素人のアドバイスは余計に状況を悪くするかもしれないからあなたがスッキリするまでひたすら聞くね!」と宣言してひたすら聞くのが無難です(適度に「それは腹が立つね」「それはひどい!」など同意をはさみつつ、自分の意見は言わない方がよいです)。
「友人から愚痴を一方的に聞く」という行為は、
相当強いストレスになる
しかし、これを毎回だと質問者さんの休みの日は楽しいことができず終わってしまう気がします。どこまで質問者さんが相手に付き合いたいか? も含めて「その人と休日会うのを辞める」「ひたすら聞くに徹する」「これら二つを適度に混ぜながら楽しいことをする」という選択をしてください。
流石に一回だけの愚痴で相手と会うのをやめるのは極端すぎますが、ずっと一方的に愚痴を聞くだけの関係を無理して続けようとするのも限界があるのではないでしょうか(過去に自分も愚痴ってたしなぁという思い出があるなら、同じくらいは愚痴を聞くのもやむなしかと思います)。
長々書きましたが、それくらい「友人から愚痴を一方的に聞く」という行為は受け手にとっては相当強いストレスになってもおかしくない、正常な反応だということは知ってほしいです。
そして、そのストレスを耐える必要があるのかないのか? は一度冷静に考え、行動を変化させることを決断することは決して悪いことではありません。頭の整理のご参考になれば幸いです。
元内科の精神科専門医
中高生時代イジメにあうが親や学校からの理解はなく、行く場所の確保を模索するうちにスクールカウンセラーの存在を知り、カウンセラーの道を志し文系に進学する。しかし「カウンセラーで食っていけるのはごく一部」という現実を知り、一念発起し、医師を目指し理転後、都内某私立大学医学部に入学。奨学金を得ながら、勉学とバイトにいそしみやっとのことで卒業。医師国家試験に合格。当初、内科医を専攻したが、医師研修中に父親が亡くなる喪失体験もあり、さまざまなことに対して自信を失う。医師を続けることを諦めかけるが、先輩の精神科主治医と出会うことで、精神科医として「第二の医師人生」をスタート。精神科単科病院にてさまざまな分野の精神科領域の治療に従事。アルコール依存症などの依存症患者への治療を通じて「人間の欲望」について示唆を得る。現在は、双極性障害(躁うつ病)や統合失調症、パーソナリティ障害などの患者が多い急性期精神科病棟の勤務医。「よりわかりやすく、誤解のない精神科医療」の啓発を目標に、医療従事者、患者、企業対象の講演等を行う。個人クリニック開業に向け奮闘中。うつ病を経験し、ADHDの医師としてTwitter(@DrYumekuiBaku)でも人気急上昇中。Twitterフォロワー6.6万人。『発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳』が初の著書。