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廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

今までの教育方法は、ホモ・モビリアンスになりつつある我々の子どもたちにふさわしいものか――佐賀県で進めている電子黒板導入で考えたこと

廉 宗淳 [イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]
【第14回(最終回)】 2013年1月29日
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 それに対して、私は審査委員の方々に、「電子黒板なのに、従来の黒板と同じ感覚で書くことができるというのは、本当に素晴らしいことなのでしょうか?」と質問を投げかけました。「それなら、従来の黒板をそのまま使えばよいはずです。なぜ、わざわざ高いお金を出して、電子黒板を購入する必要があるのですか?」と重ねて問いました。すると、審査委員の方々はしどろもどろになりました。

 さらに、私が「これまでにない新たな教育手法で、子どもたちに素晴らしい授業を行いたいのではないのですか。それであれば、今、私たちが選ぶべきは、画像や動画、アニメなど教育用のデジタルコンテンツを十分に利活用できる電子黒板です」とお伝えしたところ、「その通りだ。すっかりメーカーの説明に乗せられてしてしまった」と言われました。

 その結果、デジタルコンテンツを投影する際により鮮明に見えて、動画を利用する際にも後方席からでも動きがはっきりと分かる液晶モニタータイプを選ぶことにしたのです。

 しかし残念ながら、日本ではまだまだ、そういったICTの力を十分に活用したデジタル基盤の教育方法やそのためのデジタルコンテンツがゆきわたっていません。いち早く教師の方々が先端のデジタル機器を使いこなし、よりレベルの高い教育を実施することを期待しています。

 最近、人類学を専門とする韓国の大学教授が書かれた面白い本を読みました。教授によれば、人類はこれまで2段階にわたる大きな進化を遂げており、現在、3段階目に突入しているとのことです。

 1段階目では、単細胞から長年にかけて細胞分裂を繰り返し、現在の人類の姿であるホモ・サピエンスへと進化したと言います。これは生物学的進化と言えるでしょう。2段階目は、文字や言葉を介した教育による進化です。そして、3段階目が、ICTによる「ホモ・モビリアンス」への進化です。

 ホモ・モビリアンスとは、ホモ・サピエンスとモバイルとの造語です。SFの世界には、「サイボーグ」という言葉があります。身体と機械が一体化した人間のことです。一方、常にスマートフォンやモバイルPCを持ち歩いている我々は、すでに身体と情報機器が一体化していると言っても過言ではないのではないでしょうか。

 東京にいながらにして、数万キロ離れた地球の反対側のリアルタイムの光景を、ネットカメラを通じて見ることができますし、インターネット検索を通じて、計り知れない情報を瞬時に引き出すことができます。また、地理的に離れている人とリアルタイムに議論することも可能です。現代人は、インターネットが登場する前の人間にはなかった能力を持つ新人類と言えるのです。韓国の大学教授はこの状況を、ホモ・モビリアンスと命名したのです。

 今までの教育方法がホモ・サピエンスを対象にしたものであったとすれば、これらからの教育方法は、ホモ・モビリアンスになりつつある我々の子どもたちを対象にしたものに、抜本的に変えていなければならないのではないでしょうか。

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廉 宗淳
[イーコーポレーションドットジェーピー株式会社代表取締役社長]

1962年生まれ。大韓民国空軍除隊後、国立警察病院、ソウル市役所に 勤務。日本でのプログラマー経験を経て、韓国で株式会社ノーエル情報テック設立。2000年、日本でイーコーポレーションドットジェーピー設立。青森市の 情報政策調整監、佐賀県情報企画監、総務省の電子政府推進委員や政府情報システム改革検討会構成員を務めている。

廉宗淳 韓国はなぜ電子政府世界一なのか

お隣の韓国は、国連の電子政府ランキングでここ数年、1位が指定席。かたや、日本は順位を下げ続け2012年は18位。韓国の電子政府は何がすごいのか、日本が学ぶべきポイントはどこか。90年代前半に日本でITを学び、現在は、行政、医療、教育などの分野でITコンサルティング事業を展開する廉宗淳氏が、日本の公共サービス情報化の課題を指摘する。

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