「運動」の驚くべき”癒し効果”にスポットを当てた研究が、今、世界的に注目を集めている。運動すると……「ストレスから守られる」「抗うつ薬に匹敵する”うつ改善効果”が得られる」「レジリエンス因子が増え、不安に強くなる」「遺伝と同レベルの認知症リスクを解消できる」「子どもの勉強への集中力が高まる、成績が上がる」など、その驚きの研究結果をまとめたのが”運動×神経科学”の第一人者であるジェニファー・ハイズ博士だ。彼女の研究は、ニューヨーク・タイムズ、BBC、CNN、ハフポストなど、多数の国際的メディアに取り上げられて話題を呼んでいる。その内容を一般向けにわかりやすくまとめた初の著書の邦訳版『うつは運動で消える 神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』が発売された。今回は、本書の内容の一部を特別に公開する。

3万人以上の調査からわかった「うつ」を予防する習慣photo: Adobe Stock

「週に1時間の運動」がうつを予防する

 幸いなことに、あらゆる種類の運動がうつ病の抑制に役立つことがわかっています。このことは、過去に行われた最大規模の健康調査によって実証されています。
調査では、3万3000人以上の精神的・身体的な病気の既往がない健康な男女の運動について調査しました。

 研究者は、参加者の運動の頻度、運動時間と強度について質問し、追跡調査を行い、11年後にうつ病になった人を調べました。以下はその結果です。 

・うつ病になる可能性が最も高いのは、運動していない人だった
・うつ病になる可能性が最も低いのは、任意の強度で週に1時間以上運動している人だった
・うつ病の新患の少なくとも12パーセントは週に1時間以上運動していれば、このような事態を避けることができた。1時間を超える運動、または強度を上げた運動に、追加の予防効果は見られなかった

 結論としては、週に1時間の運動は、強度にかかわらずうつ病を予防することがわかりました。

(本原稿は、ジェニファー・ハイズ著、鹿田昌美訳『うつは運動で消える ~神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』の内容を抜粋・編集したものです)

ジェニファー・ハイズ

世界トップのキネシオロジー(運動科学)学科を擁するカナダ・マクマスター大学のニューロフィットラボのディレクターであり、運動と神経科学研究の第一人者。主に、身体運動がメンタルヘルスや認知能力にもたらす影響について研究し、受賞多数。その研究は、ニューヨーク・タイムズでの特集をはじめ、CNN、NBC、BBC、ハフポスト、CBSなど、国際的メディアの注目を集めている。初の著書の邦訳版『うつは運動で消える』が2022年9月7日に発売。