直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
読んでおきたい歴史小説10冊をセレクト
コロナ禍が去って、インバウンドの観光客が増えている今、外国の人と歴史の会話になったときに恥をかかないためにも、最低でも読んでおきたい歴史小説を10冊挙げてみました。
1『国盗り物語』(司馬遼太郎 著)
斎藤道三と織田信長を扱った作品です。アメリカやカナダなどでは織田信長の人気が高いのですが、これを読んでおけば信長について自信を持って語ることができるはずです。
2『徳川家康』(山岡荘八 著)
アジア圏、特に中国や韓国では家康への関心が高いので、この作品を押さえておけば間違いないでしょう。
3『翔ぶが如く』(司馬遼太郎 著)
視点は薩摩に傾いていますが、幕末から明治期を通史的に知る上でぜひおすすめしたい作品です。
4『沈黙』(遠藤周作 著)
海外にもよく知られている日本の歴史小説の筆頭です。日本人のキリスト教観をよく伝えており、読んでおいて損はありません。
5『炎環』(永井路子 著)
日本初の女性リーダーともいえる北条政子の生涯を描いています。
6『平将門』(海音寺潮五郎 著)
平安時代の中央主権を目指す朝廷と、日本の地方の実態を描いているという意味で、当時の日本という国をよく知ることができると思います。
7 『白村江』(荒山徹 著)
「白村江の戦い」について、名前だけは聞いたことがあっても、詳しく知らない人が意外と多いはずです。この作品から古代の日本と中国の関わりが見えてきます。
8『聖徳太子』(黒岩重吾 著)
日本の国の成り立ちを知ることができる入門書ともよぶべき物語です。政治家として成長していく聖徳太子の姿を少年期から描いており、感情移入することができます。
9『大義の末』(城山三郎 著)
主人公は第二次大戦期の軍国青年。近現代史に触れるならこの作品です。城山三郎は、この作品を通じて天皇制についても考察しています。
10『樅ノ木は残った』(山本周五郎 著)
江戸前期の仙台藩伊達家で起こったお家騒動を題材にした物語です。江戸時代の「藩」というものがどういうものであったかをつかむにはよい作品です。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。