オピオイド拮抗薬の自販機Photo:Scott Olson/gettyimages

 オピオイド(麻薬系鎮痛剤)中毒が社会問題化している米国で、過剰摂取者用のスプレー式点鼻薬の自動販売機を設置する動きが広がっている。薬物過剰摂取による死者を減らそうとする取り組みだ。

 米食品医薬品局(FDA)のほか複数州がエマージェント・バイオソリューションズのナロキソン塩酸塩点鼻スプレー「ナルカン」といったオピオイド拮抗薬についての規制を緩和したため、オピオイド常用者を支援するNPO(非営利組織)などが、こうした医薬品の提供を拡大している。

 昨年は全米の薬物過剰摂取による死者数が10万8000人を超え、記録を更新した。違法オピオイド「ファンタニル」がこの数字を押し上げている。

 自販機の導入は薬物常用者が解毒薬を手軽に入手できるようにする狙い。ワシントン大学が2021年まで5年にわたり実施したプロジェクトによると、過剰摂取の緊急治療の94%はオピオイド常用者が自ら実施した。このプロジェクトが記録した過剰摂取例8711件のうち、緊急治療に救急救命士か警官が携わったのは1%未満にとどまった。