「合格」時間差と「費用」負担問題が浮上

 こうした状況に、高校側はどのように対応しているのだろうか。

 教員は、合格の確保と授業の継続の狭間で悩みを深める。生徒の気持ちに寄り添えば早く進学先を決めてあげたい。11月を過ぎると、年内入試で合格して進学先を決めた生徒が出てくるが、そうした生徒はなかなか授業に集中できない。

 一方で、年明けすぐの共通テストを皮切りに、いよいよ一般選抜に挑もうとする生徒もいる。残念ながら「年内入試」では不合格となった生徒の気持ちを切り替えさせて、一般入試に取り組ませなければならない。受験対策を目的とした授業は、これからまだ受験をする生徒にはよいかもしれないが、既に合格を勝ち取った生徒が出席する目的は全くなくなる。

 そうした授業への取り組み方が異なる生徒たちがクラス内に共存する。教室にも教員にも限りがあるから、合格を決めた生徒とこれからまだ受験が続く生徒を分離したクラスを設けることもできない。高校の教育現場での大きなジレンマだ。

 こうした状態を想定して、「年内入試」を受けさせようとしない高校、指定校の推薦枠を公開しない高校もある。とはいえ、指定校推薦では生徒を送り込まなければ継続して「推薦枠」をもらえなくなるのではないか、との不安もある。有名大学の「推薦枠」を簡単に捨てることはできない。だから生徒からの「指定校推薦」への申し出を抑え込むことはできない。ここにも高校側のジレンマがある。

「年内入試」を受ける条件として、共通テストの受験を求める高校もある。共通テストまで全生徒を引っ張ることで、3年生の学習意欲を維持しようとするためだ。中には大学に、「年内入試の受験生にも共通テストを課してほしい」と願い出る高校も少なからずある。

 実際、共通テストに出願しても、共通テスト利用の受験をせず、受験料をドブに捨てる生徒の存在は地方において目立っている。そうした受験生は全体の4分の1だと大学入試センターは分析する。共通テストの出願期間(23年度は9月26日から10月6日)は年内入試の合格発表前にある。万一、年内入試で不合格になったときの保険のために出願しないといけない面もあるが、年明けまで緊張して授業を受けさせるための方策として高校が受けさせているケースが多いようだ。

 これは実に迷惑な話だ。本人の意思とは関係なく共通テストを受けさせられている生徒は、受験会場で騒ぎはしないまでも、やる気のなさを露骨に出す。試験時間中にずっと寝ていたりして、真剣勝負の受験生から白い目で見られるだけでなく、試験監督から注意を受けることもある。

 民間4技能テストの導入がもくろまれたときに、検定料の負担問題が地方の高校から主張された。共通テストの受験料(3教科以上で1万8000円)より、英語の検定料(英検2級団体申し込みで6000円から)の方が安いものもある。確かに共通テストに加えて英語の検定料を支払うと負担が大きくなる。しかし、そもそも共通テストの受験を必要としない生徒に共通テストを受験させることの負担をどう考えていたのだろうか。その主張はどうもバランスが悪かった。共通テストの受験が“高校都合”でしかないことは、生徒にとっては大いに“いい迷惑”となりかねない。

 教育機会の平等と費用負担についても、その議論の整合性のなさが顕在化してきた。こうした受験料の無駄な負担をなくすためにも、共通テストの受験料は無料にすべきではないだろうか。共通テストの運営費用は、大学入試センターのコスト削減と、各大学が大学入試センターに成績を請求する際の費用を値上げしてまかなえばいい。大学入学センター試験の会場運営をした私の経験からすれば、大学の通常の手当より多く支給される試験監督料や会場に支給される備品など、大学入試センターのコストはまだまだ下げる余地はある。