仏像や仏画で私たちが目にしているご神仏のお姿や手に持っているもの、表情などには、それぞれのご神仏が持つご利益などに関連した意味があります。それらの意味を知ることで、今ある願いに最適なご神仏により深く祈ることができるようになります。
ここではご神仏それぞれのご利益などについて、嵐山晶さんの著書『願いをこめて、心身を整える ご神仏なぞるだけ瞑想』から、嵐山さんの繊細で美しいご神仏のイラストとともに紹介します。

【美しすぎる福の神】幸福、豊穣、繁栄のご利益ある女神。手にした珠から「福」が無限にあふれ出てくる!© 嵐山 晶

貴族階級に信仰された
福の神「吉祥天」

 インドのラクシュミー女神を起源とする吉祥天(きちじょうてん)
 その名の通り、吉祥や幸福、豊穣を授ける福神として古くから仏教に取り入れられ、奈良時代から貴族階級の信仰を集めていたといいます。
 仏教では毘沙門天(びしゃもんてん)の妻とされ、富貴繁栄の他に、家庭を護る神でもあります。

美しい貴婦人か
素朴な姿か

 吉祥天像の特徴は、中国唐時代の豪奢な貴婦人の姿。
 
日本の吉祥天を代表する像といえば、京都・浄瑠璃寺。美術品かと見まごうような美しい貴婦人の姿に造られています。
 しかし古代に造られた像を見ると、意外に素朴な吉祥天の姿が多く、当時との感覚の違いを感じます。
 今回は、インド女神の華やかなイメージを残しつつ、散華(仏を供養するための花びら)に飾られた、とにかく美しい幸福の象徴をイメージしました。

どんな願望も叶える珠(たま)に
願いを込めて

 吉祥天が持つ法具は、基本的に如意宝珠(にょいほうじゅ)のみです。如意宝珠は、意のままに宝を出すとされていて、さまざまな仏が手にしています。
 左手には如意宝珠をのせ、右手は高坏に盛られた如意宝珠を「どうぞ」と差し出すような仕草をしています。
 降り注ぐ散華は、実は天にいる白象が宝瓶を鼻でつかみ傾けて雨らせているもの。散華だけでなく、宝や如意宝珠も雨(ふ)らせます。
 吉祥天が手に載せた、どんな願望も叶えてくれる如意宝珠に願いを込めましょう。

【美しすぎる福の神】幸福、豊穣、繁栄のご利益ある女神。手にした珠から「福」が無限にあふれ出てくる!© 嵐山 晶
文・イラスト:嵐山 晶(らんざん・しょう)
東京都生まれ。日本デザイン専門学校卒。主にアジア圏の歴史文化を題材に、伝統的な図像に現代の感覚を取り入れた作品制作に取り組んでいる。挿絵を担当した書籍に『ときめく御仏図鑑』(山と溪谷社)、『龍神とご縁を結ぶ 「龍使い®」ノート』(宝島社)などがあり、他の活動に谷中西光寺の御朱印イラスト制作などがある。
監修:小瀧宥瑞(こたき・ゆうずい)
高野山真言宗の阿闍梨。牧野山蓮乗院五十三世住職
高野山大学文学部密教学科卒業。高野山真言宗総本山金剛峯寺において得度。高野山真別処円通律寺において受戒。華道高野山一般華・伝統華師範補任。高野山大学加行道場大菩提院において加行成満。高野山宝寿院道場において伝法灌頂入壇了。主に小野方、三宝院流を中心に一流伝授を受け、真言神道、野沢三十六箇流総許可を受ける。

※本稿は、嵐山晶・著『ご神仏なぞるだけ瞑想』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。