インドの富豪ゴータム・アダニ氏は国内最大の空港運営業者になった。この他、炭鉱やインド最大の民間港湾施設の運営も手掛ける。次に照準を定めるのは、インドを象徴するスラム街の巨大再開発計画だ。ムンバイ中心部にあるスラム街「ダラビ」は、アカデミー賞を受賞した2008年の映画作品「スラムドッグ$ミリオネア」の舞台となったことで、世界で一躍注目を集めた。インド人にとってはそれ以前から有名な場所で、ムンバイ市は20年近く、掘っ立て小屋が密集するこの地を、近代的な高層ビルが立ち並ぶ都心部へと再開発することを計画していた。面積がニューヨーク市のセントラルパークの約3分の2程度であるダラビには、推定100万人が暮らし、働いている。地元住民を移転することの難しさから、開発計画がこれまで進展することはなかった。ダラビは都市の中の都市だ。ムンバイのど真ん中を再開発することは、マンハッタンの一角を取り壊す作業にほぼ等しい。しかも、マンハッタンに比べてはるかに人口密集度が高い。