一方、中国にとって、北京五輪は国威発揚の場である反面、チベットばかりでなく新疆ウイグル自治区の自治区内で独立を求める過激派の動きが活発化するなど相当緊迫した状況も起こりうるのは確かです。

 おそらく、日本でも報道されていと思いますが、中国での報道によりますと、3月に19歳のウイグル族の少女がウルムチから北京ゆきの南方空港便でコーラ缶2缶にガゾリンを充填し機内に持ち込み北京上空で爆破させようとトイレに入ったところで取り押さえられたほか、つい先週も爆発物を北京と上海に持ち込んだ過激派が逮捕されたばかりです。ともにアルカイダが海外で訓練した兵士であるとの情報もあります。

まずは国の安定が最優先
人権は二の次という現実

 中国にとっては、今はある意味こうした過激派に対する臨戦態勢にあると言ってもよいと思います。誤解を恐れずに言えば、中国の現実を目の当たりにするにつけ、アメリカがいくら人権を叫んでみても、国の安定がなければ人権はさらに踏みにじられるというのが現実ではないかと言うのが私の印象です。これは、イラクの現実を見れば誰でも分かると思います。

 かつてのチベットにおいて、国際法曹委員会がいう虐殺のような事実があったのかもしれませんが、中国では少数民族とのこうした軋轢ばかりでなく、漢民族同士でも文化大革命のような殺し合いが行われたと広く世界に知られているところであります。私は、だから目先の人権を軽視してもよいと言っているのではなく、それだけ混乱した国が最近やっと安定して来たのが現在の中国であるということを申し上げたいのです。

 きわめて現実的に人権を重視しようとすれば、その国、その民族の現実に即したステップが必要になるのではないかと思います。現在の中国の現実に即して考えれば、現実としてチベットは中国が自国の領土として長期的に統治している以上、その統治下における安定を第一に考えるべきでないかと思います。

 それを飛び越えて一気に独立を目指すのであれば、当然、命を掛けて、中国と戦火を交えることも覚悟しなければならないのですが、それはチベット人が自ら決めるべきことで、外国人がおいそれと干渉できる問題ではないものと思います。