エリア間格差が著しい埼玉県

 埼玉は、政令指定都市のさいたま市(約134万人)内に私立中高一貫校や公立の有名進学校が集まっている。市の数が日本一多い県だけあって、中核市として川越市、川口市、越谷市、同候補市には所沢市、春日部市、草加市も控えている。主要鉄道路線沿いに拡散しているものの、最難関の進学校に関しては、JR京浜東北線沿いのさいたま市内に並んでいる。

 首都圏ではいち早く、2003年に県立伊奈学園総合が中学を付設した。水面下では次の対象候補校は決まっているものの、20年を経ても現状は1校にとどまっている。一方でさいたま市は、付設型の18位市立浦和と中等教育学校の大宮国際をそれぞれ設置している。中核市の川口市は、21年に市立川口に中学を付設した。大宮国際は中高ともに国際バカロレア(IB)の教育プログラムを導入しており、公立のIBスクールとして全国から注目されている。

 埼玉は、神奈川で見られた「高校三原則」(小学区制・男女共学・総合制)とは違う道を歩んできた。学区撤廃は東京の翌年、04年度から実施されている。旧学区の数は12で、千葉や東京より多く、神奈川よりだいぶ少ない。10年度から3年間、進学指導重点推進校(★)が11校指定されていた。男女共学については、進学校で男女別学を残している。ランクインした学校を中心に、旧学区と合わせて見てみよう。

 男子校は1位浦和(第1南部)★、7位川越(第2中部)★、10位春日部(第8北部)★、20位熊谷(第6)★、他に松山(第3)があり、女子校は11位浦和第一女子(第1南部)★と22位川越女子(第2中部)★で、他に久喜(第8)、春日部女子(第8)、熊谷女子(第6)★、鴻巣女子(第1北部)、松山女子(第3)がある。共学校は6位大宮(第1南部)★、24位不動岡(第7)★、30位蕨(第1南部)、32位所沢北(第2中部)、37位越谷北(第8南部)、他に浦和西(第1南部)★がある。

 図1、図2に載っているが、進学指導重点推進校に指定された高校がない旧学区としては、第1北部(上尾市など)、第2東部(和光市など)、第2西部(飯能市など)、第4(秩父市など)、第5(本庄市など)が挙げられる。県の西側は熊谷市のある第6学区以外は、これといった公立進学校がないようで、全県のバランスを取ろうとしている千葉と比べ、埼玉のメリハリというか力の置き具合が示されていて興味深い。

 人口が多いさいたま市の中でも、県庁所在地で文教都市としても名をはせる浦和区は別格で、浦和と浦和第一女子を双璧に、旧制浦和第二高等女学校で共学校の浦和西と、区内にある3校とも進学指導重点推進校に指定された。これに大宮を加えた県立進学校を補う存在として、市立と私立の中高一貫校が控えている状況ともいえそうだが、浦和と浦和一女の壁は依然高い。

 浦和には、毎年、イギリスのボーディングスクールに在校生を送り出すための奨学金があるなど、同窓会のバックアップが大きい。また、伝統的に受験科目に絞らせず広く学ばせる。教員チームも参加する体育祭や強歩大会、文化祭など、長年の伝統が学校行事に色濃く残る。ラグビー部が全国大会に出場するなど、文武両道を具現化している。

 浦和一女では、桜蔭や豊島岡女子といった東京の私立女子中高一貫校と同様に、文系クラスよりも理系クラスが増えている。女子の理系進学に対する保護者の期待も大きいそうだ。また、英語のペーパーバックに語彙数が示されているなど図書室が充実しているほか、個人ブースが置かれた自習室もあり、施設を工夫しながら充実させている点にも注目しておきたい。