コーチ親会社の買収、「手頃な高級品」の限界示すPhoto:Scott Olson/gettyimages

 憧れの高級品の世界では「お手頃価格」は売り文句にならない。

 当然ながら、高級皮革製品・アクセサリーの「コーチ」を傘下に持つ米タペストリーがカプリ・ホールディングスの買収を決めたのも、それが理由ではない。カプリは手の届きやすい米「マイケル・コース」のほか、高級ブランドの伊「ヴェルサーチェ」、英「ジミーチュウ」などを展開している。比較的低価格の高級品部門が、超高級品を手掛ける同業他社のような堅調な伸びを達成できていないことは否めない。また、タペストリーの主要顧客である、所得が全国の中央値を優に上回るものの上位1%には遠く及ばない層はひっ迫感を感じており、規模拡大なしには成長は難しそうだ。

 タペストリーのスコット・ロー最高財務責任者(CFO)はインタビューで「手の届く高級品」という言葉はもはや無意味だと述べ、消費者は高級品を購入する際、「価格帯を上下する」ことをいとわないと指摘した。「われわれの商品は、ルイヴィトンが競合の場合もあれば、マイケル・コースの時もある」とし、「値段よりも思い入れできるかを重視している」と述べた。