米連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長による実体経済を守るための取り組みは、金融業界の一角を意図せず潤し、M&A(合併・買収)案件に賭けるペントウォーター・キャピタル・マネジメントなどのヘッジファンド勢に巨額の利益をもたらしている。カーン氏はこの2年間、バイデン政権の反トラスト(独占禁止)当局トップとして強硬的な戦略を推進し、マイクロソフトによるゲームソフト大手アクティビジョン・ブリザードの買収や、バイオ医薬品大手アムジェンによるアイルランドの同業ホライゾン・セラピューティクスの買収などを阻止しようとしてきた。マイクロソフトとアムジェンの案件を巡っては、いずれもFTCの介入に投資家が警戒を強め、買収対象企業の株価が乱高下する事態となった。そのため、M&Aの成否に賭けることを戦略の軸にしているヘッジファンド勢のプレーブック(投資戦略)は複雑化した。