
アビームコンサルティング執行役員 プリンシパル 素材・化学ビジネスユニット長
1999年アビームコンサルティング入社。日系企業の海外進出を支援し、2010年から7年間米国に駐在。帰国後、XRコンサルティングやウェルビーイング経営のサービスを主導。21年より素材・化学ビジネスユニット長。企業のサステナビリティ経営を支援する「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)イニシアチブ」リーダー。
今井 CEOの髙橋(秀仁)とは、お互い統合の責任者同士、統合の過程で何度も議論を重ね、考えがとても近いことが分かりました。髙橋は、企業経営において戦略は、もはやコモディティー化していると言っています。つまり、一つの業界で事業ポートフォリオなどをロジカルに考えていけば、どの企業も似通った戦略に行き着き、他社にない圧倒的な優位性を保てないというのです。
しかも先の読めないVUCAの時代では、戦略を定めて実行しても、予想通りの結果が得られるかどうか分かりません。そもそも戦略も状況に応じて変えていく必要があります。そのときに大切なのは、個々の従業員が自律的に行動し、共有した理念に基づく判断が適時適切にできるかということです。つまり、他社との差別化は、戦略をやり切る人材がいるかどうかということになるのです。
戦略に合った適切な人材を見極めて育てる体制があるか、多様な能力が発揮できる企業文化があるか、それが組織としてサステナブルな仕組みとなっているか、という人的資本がものをいうのです。
今投資家は、非財務情報に注目しています。人的資本は代表的な要素の一つです。事業環境の変化が激しい中にあって、売上高などの財務情報は過去の結果でしかなく、必ずしもこの先の業績を明確に物語るものとはいえません。むしろ注目しているのは組織文化や人材であり、それによって将来の変化に対応できる準備ができているかを見極め、投資対象として適切か否かを判断しようとしていると理解しています。
こうした背景からレゾナックは、人的資本によって価値を創出する企業経営にフォーカスし、企業価値を向上させるのは「戦略×個の能力×組織文化」の掛け算であると定義し、髙橋もCHROである私も、この考え方を貫き通すとコミットしています。
人的資本経営を支える「共創型人材」

アビームコンサルティング執行役員 プリンシパル 戦略ビジネスユニット
パッケージ会社や外資系コンサルティングファームを経て、アビームコンサルティング入社。人事戦略、プロセスやテクノロジーの事業責任者として、多くの企業の人事戦略策定、タレントマネジメント、DX構想から業務設計、システム構築などのコンサルティングに豊富な経験を有する。人的資本経営コンサルティングチームリーダー。
堀江 貴社のパーパスと人的資本経営の関連性についてご紹介ください。
今井 私たちレゾナックのパーパスは「化学の力で社会を変える」です。当社は、多様な技術の「擦り合わせ」によって新しい価値を生み出します。経営に関わる私たちと共にそれをかなえる従業員は、さまざまな社会課題に対して「こうしていきたい」という情熱や志を持つ人材です。思いを実現するためにどういう人物や組織と協働したらいいのか自律的に考え、組織の指揮命令系統を離れてつながり、「擦り合わせ」をしながらソリューションを創出していく。こうした人材を「共創型人材」と定義し、人的資本経営の中核に据えています。
久保田 経営者は今、人事領域の変革が成長の鍵を握っていることは分かっているものの、実行の意識がMUST、すなわち取り組まなければならない緊急の課題になっていません。せいぜいWANT(そうなった方が良い)のレベルにとどまっています。人的資本経営がうまく進まない原因は、このあたりにあるのではないかと感じます。
レゾナックは「共創がなければ生き残れない」との危機感から共創型人材を経営の要に据え、マテリアリティー(組織にとっての重要課題)を定義しています。その差は大きいと感じます。
堀江 私は、素材・化学のインダストリーでコンサルティングを行う立場として、今の業界には大きな課題があると見ています。