2004年の共著で「共創」という新たな概念を世に問うたミシガン大学教授のベンカト・ラマスワミ氏。従業員や顧客、サプライヤー、パートナーなど多様なステークホルダーとの協働によって新たな価値を生み出すこのコンセプトは、さまざまなタイプの革新に適用できると同氏は主張する。そして、共創による確かな変革の実現をテーゼとするアビームコンサルティング社長の山田貴博氏は、一企業だけでなくバリューチェーン全体における価値の創造や、経済的価値だけでなく社会的価値の創造にまでスコープを広げて共創の持つ意義を問い直すとともに、ラマスワミ氏との対談を通じて共創が持つ新たな可能性を見いだす。
高度ネットワーク社会で価値創造は民主化、分散化
山田 ラマスワミ教授とC.K.プラハラード博士が「共創」(Co-Creation)の概念を提唱されたのは、今から20年ほど前のことですが、デジタル変革による成長戦略の実現や社会課題の解決に企業が取り組んでいる今日、顧客や取引先、地域社会、公共セクターなど外部のステークホルダーとの共創により、新たな価値を創出する必要性が高まっています。そして、多くの企業が共創の重要性を認識しています。
ラマスワミ 私と、今は亡きプラハラード博士が共創の概念を打ち立てたのは、21世紀に入って間もない頃でした。当時、スマートフォンは登場しておらず、世界中の誰もが携帯端末を持っていたわけではありません。まだ「Web1.0」の時代でしたが、プラハラード博士からこんな問い掛けがあったのです。