2月22日、TPP(環太平洋経済連携協定)に関する日米共同声明が発表された。ここで、「聖域なき関税撤廃は交渉参加の前提ではない」ことが確認された。これを受けて、3月15日、安倍晋三総理大臣はTPPの交渉に参加することを正式に表明した。このニュースは、中国にかなりのショックを与えたようである。

 今回は、日本のTPP交渉参加に対する中国の反応を、中国のメディアを通じて見ることとしよう。

アメリカのアジア政策の
一環としてのTPP

 最初に注意すべきことは、「TPPはアメリカのアジア戦略の一部だ」ということである。

 日本では、「TPPとは貿易自由化協定である」と単純に理解されていることが多い。しかし、これは自由化協定ではなく、「ブロック化協定」である。これは、実質的には日米のFTA(自由貿易協定)であり、その目的は、太平洋経済圏にアメリカ流の経済ルールを確立し、中国の成長をけん制することだ。

 日本は、安全保障の面でアメリカに依存せざるをえないという事情があるので、TPPがアメリカの太平洋戦略である以上、それには参加せざるをえない。これは、最初から課されている制約条件である。つまり、「経済的な利害得失を考慮してTPPに参加するか否かを選択する」というオプションは、日本には最初から与えられていないのだ。

 ところが、それでは国民を納得させることができない。そこで、TPPに経済的な意味付けを与えようとする努力がなされる。

 しかし、純粋に経済的に見れば、TPPにはほとんど意味がないのである。とくに、「日本の輸出を増やす」という観点から見ればそうだ。