職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
そんな悩みをズバッと解決する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんは、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介するプロです。この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「お詫び表現」について紹介しましょう。

感じのいい人がお詫びのときに添える「相手を不快にさせない一言」ベスト1Photo: Adobe Stock

不快にさせない断り方

 多くの方からご相談されるもののひとつが、「相手を不快にさせない断り方」です。
 もし、相手を怒らせてしまったらどうしよう、という心配があるのでしょう。

 拙著『気づかいの壁』では、メールでお断りをする方法として「結論(できません) → 理由 → 詫び → 代案」という構文をご紹介しました。

 今回は、その中でも、シンプルだけれど、絶妙に相手の心に届く「お詫び表現」を伝えします。

「申し訳ない」に足すべきこととは?

 早速ですが、その方法を紹介しましょう。
 それは、相手の行為やお申し出に「せっかく」を添えることです。

 先日、ある商業施設のレジに並んでいると、私の前にいた人がクーポンらしきものを店員さんに差し出しました。
 すると、おそらくは学生アルバイトさんと思しきその店員さんから「こちらのご利用は、1000円以上のお買い物からなんです」と返ってきていました。

 そのお客さまは少しがっかりしたように、クーポンをお財布に戻していました。
 そこでその店員さんがかけたお詫びが、

「せっかく、取り出してくださったのに、申し訳ありません」

 でした。

「お財布にしまう=その前にクーポンを取りだした」と、相手の行動から推察したのでしょう。

 ただ「申し訳ありません」だけを伝えるより、何に申し訳ないかが明確になるので、相手には「わかってくれている」という実感がわいてきたことと思います。

「この一言」を付け足そう

 ビジネスシーンでも、やむを得ず断らなくてはならないシーンはあります。

 せっかく、お問い合わせいただきましたのに、申し訳ありません。
 せっかく、ご利用いただきましたのに、申し訳ありません。
 せっかく、ご期待いただきましたのに、申し訳ありません。

 と、このように「相手の行為・お申し出+せっかく」で、詫びてみてください。

 断られたとしても、こんなふうに詫びられたら、相手から納得を得られることでしょう。

(本稿は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が、特別に書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。