前編に続き、ジャーナリスト/メディアアクティビストの津田大介氏と国際コラムニストの加藤嘉一氏の対談「ウェブで日中政治は動くのか」の後編をお届けする。前編では、自由に飢える中国人民が政府の言論統制が追いつかないウェイボーを使って政治的な発言をし、世論を盛り上げ、中国政府の政策当局者がそこから影響を受けているという議論をお届けした。

後編では「日中メディア・政治体制比較」、「日中の若者の政治参加について」のほか、中国のように日本ではウェブで政治が動くのかというテーマの議論をご紹介する。(構成・執筆/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

ネット検閲会社で全部見ていたら
親日になっちゃって来日した学生

ジャーナリスト/メディアアクティビストの津田大介氏(左)と国際コラムニストの加藤嘉一氏(右)
Photo by Kazutoshi Sumitomo

加藤 昨年9月に起こった反日デモは日本企業が3000社以上も進出している広東省でも起こった。経済が発展していて、とりわけ反日的でもない土地で前代未聞の反日デモが起こったのでびっくりしました。

 その後、ネットを通じて、デモを煽動するような情報がたくさん入ってきた。改革開放政策を良く思わない体制内の人々がマフィアとつるんで反日デモに便乗し、現政権に圧力をかけようとしていた。当時広東省のトップだった改革派の汪洋氏や中央政府を揺さぶるような動きもあった。

 ネット社会が、“反日”を権力闘争に利用しようとする人たちを勢いづかせているのが気になる。結果的に日本企業に対する強硬姿勢に結びつく訳で、中国でビジネスをする日本企業や日本人にとっては中国ネット世論の台頭はやっかいな存在にもなりうるということです。

津田 私はずっと日本に住んでいるんですが、私の中国との接点は学生との付き合いなんです。いま、早稲田大学大学院のジャーナリズムコースで非常勤講師として教えているんですが、そこでは学生の7~8割が中国人留学生なんですよ。

加藤 へえ! そうなんですか!