ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介氏(左)と国際コラムニストの加藤嘉一氏(右) 
Photo by Kazutoshi Sumitomo

現代中国の理解には、中国人民がインターネット空間で繰り広げている議論を観察することは必要不可欠だ。言論統制がなされている中国において、当然、ネット空間も統制の対象なのだが、いまや中国では5億人超のネットユーザーがおり、中国政府が統制しきれない様々な情報や人民の感情が、ネット空間には溢れている。

 昨年来、日中関係は冷え込んでいるが、両国は大切なパートナーだ。両国関係は、お互いの国益に大きな影響を及ぼす。日本にとって、中国のネット空間での議論は注目すべきだし、非常に重要だと言えるだろう。そこで『Twitter社会論』『ウェブで政治を動かす!』などの著書があるジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介氏と、『われ日本海の橋とならん』などの著書を持ち、米ハーバード大学ケネディスクールフェロー、国際コラムニストとして活躍する加藤嘉一氏に、「ウェブで日中政治は動くのか」をテーマに語り合ってもらった。

 両氏の議論は大いに盛り上がり、「中国ネット世論」「ネット世論は日中政策にどう影響を与えるか」「日中メディア・政治体制比較」、「両国の若者の政治参加について」など多岐に渡ったため、2回に分けてお届けする。(構成・執筆/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男) 

中国政策当局者は
ネット世論を脅威に感じている

加藤 日本ではあまり言っていないんですけど、実はぼく、北京大学での修士論文を『ネットナショナリズムが中国対日外交政策過程に与える影響』というテーマで書いたんですよ。

津田 へえ、そうなんですか。それは興味深いですね。

加藤 民主主義国家ではない中国という国家において、ネットユーザーはすでに5億人を超えていますから。東シナ海ガス田の共同開発や毒ギョーザ事件などの経緯をウォッチしながら、中国外交当局が民主国家と同じように世論・民意の影響を受けているなと感じ、そこに着目しました。論文執筆のために中国の政策当局者に取材をしたんです。実際に外交担当や通商担当などの政策立案者たちに「ネット上で起きている議論によって政策は変わるのか」「ネット上で起きている政策批判は脅威に感じるか」って聞いて回ったんですけど、取材した全員が「変わらざるを得ないこともある」「脅威に感じる」と答えていました。

 ぼくはもともとITが大の苦手で、知ろうと努力はするんですけど、なかなか(笑)。でも、いまの中国を理解する上で、ネット世論は無視できないなという思いから、数年前からようやく中国版ツイッターであるウェイボーを始めたんですよね。