これは喜ばしいことだと思います。アニメ業界でも様々なビジネスチャンスが生まれました。なりたい職業ランキングの上位に声優が入るようにもなりましたし、業界の活性化に繋がったことは間違いありません。

 しかしサブカルチャーが大衆化してメインカルチャーとなると、起こるべき問題=しわ寄せが当然発生します。

 声優のアイドル化/タレント化が、近年急激に肥大しました。これによって起きたのは、次の事態です……。

 マネージャーのやるべき仕事がめっちゃ増えた!

「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、これはかなり重大な事態です。

 先ほどご説明したように、タレント=声優ひとり当たりに対する人的リソースが、声優事務所はもともと少ない傾向にあります。つまり声優としての仕事以外、アイドル/タレント的な業務の面倒を見るだけのリソースが足りていないのです。

 また、声優が人気になり、スキャンダルや事件を起こしてしまったとき、事務所がその対応にも追われることになります。事務所の利益(取り分)を考えると、本来そこまでするようなことではないことにもリソースを割かねばならない状態です。

「足りないなら雇って増やせばいい」と思われるかもしれませんが、声優というビジネスにおいて声優ひとり当たりに対する人件費が潤沢にあるわけではありませんし、タレント化した声優のマネジメント業務は一朝一夕に習得できるものでもありません。

 そして、いまや声優事務所の社員それぞれの努力ではどうにもならないくらい、声優たちの仕事は質も量も変化してしまいました。それなのに事務所と声優との間の取り分が大きく変わることもない状態が続いているのです。

 事務所の負担が増えるからといって事務所の取り分を増やすと、声優としてはこれまでより減るわけですから、なかなか難しい問題なんです。声優のギャラを維持するには極端な話、声優事務所の業務体制がブラック化するか別の収入でなんとかせざるを得ない状態ともいえます。

 声優事務所の仕事において質的な変化が起きているのは、若年層、とくに未成年の声優のマネジメント業務の増加です。これまでの声優事務所は、声優に対して「個人事業主主義」的、いわゆる「エージェント契約」的なスタンスで接してきました。つまり自立した「大人」をパートナーとして仕事をしてきたわけです。