しかし、心身ともに未熟な10代に対して、同じ態度で接することは適当ではないでしょう。本人だけではなく保護者の方ともコミュニケーションを取る必要がありますし、マネージャーは現場へ付いて回る必要があります。アイドルとして重用されるケースも多いため、様々なことからタレントを守らなければならないことも増えてきます。
声優側にも事務所側にも
不満が募る不幸な状態
声優ファンの方は心当たりがあると思いますが、近年は有名なタイトルに数多く関わっているような声優が活動休止するニュースが相次いでいます。その多くは、アイドル/タレント的な活動を行っている人気声優です。
やむなく体調不良で休業する方が続出している。アイドル化/タレント化した声優ほど、仕事量は多く、仕事の質も複雑です。声優側は、人気になるほど自分は忙しいのに事務所はそれに見合ったフォローをしてくれない。そのような考えに陥って心身を衰弱させてしまうことでしょう。
もちろん経営の差配ではあるので、タレントに不満を抱かせてしまうことは基本的に事務所側の落ち度と言われてしまうかもしれません。ですが事務所は、人気声優だけをマネジメントしているわけではなく、所属している声優全員をマネジメントしています。
たかみゆきひさ 著
マネージャーはひとりで何人もの声優を担当していたりします。必死にフォローをしようとしても仕事量に限界はあります。事務所側の人材も、実は無理がたたって心身を壊して休職/離職してしまうケースが多数発生しているのです。
そして、事務所の取り分が少ないからと言って、声優に対して「病んでも面倒見られない。自分のことは自分でやりなよ」とはさすがに言えません。
このように、声優も声優事務所も疲弊しているのが現状です。
2020年代に突入した現在、ギャランティーの分配率や報酬体系も少しずつは変化しているようですが、まだ対応が追いついていませんし、テレビアニメの出演料も変わっていません。声優の仕事の変化のスピードに対して業界的に間に合っていないのです。