スポーツや芸術でも生きる「探究」

――新著『信じることから始まる探究活動のすすめ』の中では、知識だけではなく、スポーツや芸術の重要性にも触れていました。

河添 知識の詰め込み学習に対する探究学習の話をしてきました。このこととスポーツや芸術の世界とは別、と思ってしまいがちですが、そんなことはありません。スポーツにおいては近年コーチングが重要視され、昔の体育会のような上から押しつける指導法は否定されています。

 最後は自分で練習するしかないわけで、一人ひとりの自主性が重視されています。上達するためには何が必要かを主体的に考えるということは、「探究」的な学びと同様です。

――主体的という部分が非常に重要です。それなくして学ぶ意欲は出てきません。昨年、夏の甲子園大会で慶應義塾高校が優勝しましたが、最近は進学校の野球部が強くなってきています。東大野球部は、練習は個人、コーチはYouTubeで、足りないところは自分で考える。特に重要なのはデータ解析ですね。つまり、データで課題を見つけて個人練習を中心に解決を図る、問題解決学習(PBL)型になってきているわけです。

河添 野球やサッカーといったチームスポーツでは監督の命令は絶対です。そんな中でも、監督の方針に意見を言えるチームの方が成績は良かったという話を聞きました。チームで行うスポーツであっても、自分の主張がないとやっている意味がないと思います。

――日本大のアメリカンフットボール部の不祥事は、昔ながらの体育会体質の象徴のような事件でした。半面、ある進学校のラグビー部はかつて弱かったのですが、いかにして強くするかを考えた結果、強い運動部にいる「1.5部」みたいな存在の選手を自分のところに引き抜いてくる。そうしたら勝てるようになった。「部活は最高のPBLです」と経済産業省キャリア官僚は言っていました。

河添 1990年代、金メダルの数は低迷しました。今は復活し右肩上がりです。日本のスポーツ界が、新しい価値観でいろいろなことにチャレンジした成果だと思います。最近は新しい競技で若者が大活躍しています。学ぶことも同じです。型にはまっていたらイノベーションなんて無理ですよ。

――「生きる力」を支えるさまざまなリテラシーについては、次回、改めて取り上げたいと思います。

(続く)

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