『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』が、若いビジネスパーソンや学生の間で静かな話題となっている。競争に疲れた心を癒してくれる本と反響を呼んでいる。2度目の増刷を記念して、著者の阿部広太郎さんの対談を企画した。お相手は『私の居場所が見つからない。』が若い女性の生きづらさを表現していると話題になっている川代紗生さん。2つの作品から浮かび上がるキーワードは、「人生の選択」「挫折と後悔」「自分の居場所」「承認欲求」「自己肯定感」など、どこか通じるものがある。予想通り、“同志”の対談は大いに盛り上がった。(構成/亀井史夫 撮影/小島真也)

何かを実現したいなら、微弱な電波でも発信しつづけよう『あの日、選ばれなかった君へ』の阿部広太郎さんと、『私の居場所が見つからない。』の川代紗生さん

「傷つくことでタフになれる」(阿部)

川代紗生(以下、川代) 阿部さんの『あの日、選ばれなかった君へ』の読者って、「企画メシ」に参加されるような学生さんだったり、入社3年目ぐらいとかの人が多いんじゃないかなって個人的に思ったんですけど、やっぱり選ぶ・選ばないって機会が多いタイミングだから、そういう人たちから反響とかってありましたか。

阿部広太郎(以下、阿部) そうですね。大学生の方だけじゃなくて、社会人の方にも、「気持ちがふさぎ込んでしまってたこともあったけど、選ばれなかった切実な話を読むことができて不思議と気持ちが上向きになれたんです。それをどうしても直接伝えたいと思いました」と言ってもらえたことがありました。やっぱり書いてよかったなと思う瞬間ですね。本のタイトルの『あの日、選ばれなかった君へ』というのは、かつての自分自身に対して伝えたかったことでもあるんです。きっと川代さんの『私の居場所が見つからない。』も……

川代 あ、そうですね、はい。

阿部 かつての10代、20代、そして今も、心が引き裂かれそうになったときの自分に対して、手当てをするような言葉でもあると思うんです。

川代 ああ、「手当て」か。確かに。

阿部 それが、本を通じて現在進行形で人に届いているというのは本当に感無量です。

川代 若い人たちって――若い人たちって括っちゃうのはちょっと乱暴ですけど――そもそも、選ぶ・選ばれるの土俵に上がりたくないという人多いんじゃないかと思うんですね。私もそれは接してて勝手に感じてることなんですけど、そもそも競争とか、土俵に上がらずにいたい、平穏に暮らしたいみたいな人もいる。本当はそういう勝負の道に進んでみたいって、自分を試してみたいって気持ちもあるけど、その一方でそこまでのめり込める何かが見つかってないとか、それこそ「やりたいことが見つからない症候群」とか言ったりしますけど、それについてはどう思います?

阿部 以前、執筆した『心をつかむ超言葉術』という本に「素敵禁止」というマイルールについて書きました。「素敵」という言葉は便利だからついつい使っちゃう。だから、それを使わないことで自分の語彙力を増やしていくという自分なりの約束事を紹介したんです。その感想で、「この著者は、『素敵』ということを言えるような良い環境にいたりとか、恵まれてるということでもあるんです」みたいな感想でいただいたことがあって。自分としては、思いも寄らない反応で。

川代 確かに確かに。

阿部 自分がどんなところに身を置いているかで、発する言葉も、考え方も変わるなと思ったんですよね。若い方が……やりたいことが見つからないってことはどういうことか。見つからないけど、見つけたい! と思うなら、選ぶけど、選ばれないという状況に直面してみることで、心の筋トレにもつながるかなと思っていて。

川代 ああ、すっごくわかります。

阿部 傷つくじゃないですか、選ばれないと。でも、それがあることによって一つタフになれる。自分自身じゃなくても、自分の推しとか応援しているアイドルだったり芸人さんだったり。その人たちが何かのセレクションや賞レースで、選ばれないことで疑似的に経験することも、心の皮が1枚厚くなるなとは思うんです。でも、その痛み自体が嫌だなというのも分かります。なので、自分で作ればいいんでしょうね、自分の居場所を。誰かにジャッジされることもなく、自分で自分の居場所を作れたらいいなと思いますね。