連携・協働を促すトラックターミナル
そして、JMTが目下取り組んでいるのが70年に供用を開始した板橋トラックターミナル(東京都板橋区)の全体再開発。第1弾として、特積事業者向けに提供してきた平屋建ての荷さばき施設8棟を2層式の専用施設2棟に集約・再編する工事を進めており、23年3月に1棟目となる東棟が竣工した。荷さばき施設を敷地内の約半分に集約することで、事業者同士の連携や協働を促進するなど、荷さばき施設の機能に“共同化の時代”にふさわしい新たな価値を吹き込んだ。新時代のトラックターミナルとして今後のモデルケースになり得る存在だ。
設計面においては、利用者目線に配慮するなど“働く人に優しい”施設づくりを意識した。ホーム上の柱を可能な限り減らすことで、フォークリフトによる荷役作業などをしやすくしたほか、1階部分を全天候型にすることで使い勝手や作業効率性を格段に向上させた。さらに女性用トイレを拡充したほかパウダールームを設けるなど、多様性に配慮した快適な労働環境も実現。23年8月には隣接地で2棟目となる西棟の建設工事も始まり、25年春の竣工を見据える。「2層式の特積事業者専用施設とすることで工期短縮を図っているほか、工事期間中も可能な限り事業を継続できるように配慮しています。今回の専用施設の建設は、当社がこれからも基幹事業であるトラックターミナル事業に力を入れ、特積事業者の事業活動を支えていくという強い決意の表れです」と胸を張る。
これからも「物流」を支え続ける
間近に迫った「2024年問題」。さまざまな事業者が解決策を模索する中で、JMTも物流を下支えする立場から常に貢献策を考えているという。JMTは「メトロポリタン・ロジスティクス(大都市物流戦略)」の中で、自社の強みとして(1)リードタイム短縮につながる立地、(2)労働力確保の優位性、(3)共同輸配送や陸海空との連携のしやすさ、(4)災害にも強い事業継続性の高さ――の四つを定義しているが、これこそが「2024年問題」を乗り越えていくための処方箋ともなっている。藤田社長は「さまざまな強みを持つ当社の施設をご利用いただくこと自体が、課題解決に少なからずお役に立っているものと自負しています。当社の施設を自社の物流戦略に効果的に組み込むことで、『2024年問題』を解決する一助にしていただけたら光栄です」と強調する。
JMTのトラックターミナル内で働く各社の従業員に快適な職場環境を提供するため、18年から「働く人への応援活動」を展開。各トラックターミナルへのコンビニエンスストアの誘致やリフレッシュエリアのリニューアル、トイレをはじめとする衛生設備の更新などを行ってきた。最近では葛西トラックターミナルにシェアサイクルステーションを設置するなど“かゆいところに手が届く”取り組みも実施。「後方支援ではあるものの、これからも労働力確保の一助となる取り組みを考えていきます」。
近年はCSR基本方針に基づく活動にも力を入れており、こども食堂への支援として、寄付やボランティアに加え、グループ会社の協力の下、トラックターミナル内に寄付付き自動販売機を設置した。また24年、トラックターミナルとして初となる燃料電池商用車向けの水素ステーションが京浜トラックターミナル内に開設される。
「今後も持続可能なトラックターミナルであり続けるためには、土地の有効活用など再開発を通じて当社自体が成長していかなければなりません。今後もトラックターミナルを通じて物流を支えるとともに、新たな物流ニーズにも対応して100年企業を目指します」と力強く語る。
Chapter7 圧倒的な立地優位性で物流の連携・協働を支援する「公共トラックターミナル」の可能性
Chapter6 首都のトラックターミナルに変革の波。物流の未来を示す「夢のビッグプロジェクト」へ
Chapter5 "選ばれる"トラックターミナル 変革する首都の物流機能を支え続ける
Chapter4 変貌するトラックターミナル 首都物流変革の切り札に
Chapter3 都市物流効率化のカギを握る「トラックターミナル再開発」
Chapter2 深刻なドライバー不足、物流危機をいかにして乗り越えるか
Chapter1 東邦ホールディングスはなぜ「ダイナベース」を選んだのか?