「モノが運べない」事態が現実のものとなって日本経済を揺るがしている。これまで"湯水のように"使えていた物流が深刻な危機状態となっている今、「シェア」という新たな発想でこれまでの物流の在り方を変える取り組みが、公共トラックターミナルを舞台にして始まっている。
少子高齢化による労働人口減少に悩む日本。その中でも、典型的な労働集約産業である物流業界は、トラックドライバー不足に代表される人手不足に苦しんでいる。ある関係者は、近い将来、トラックドライバーが“絶滅危惧職種”になる可能性があるとさえ指摘する。だが、これは物流業界だけの課題ではない。“モノが運べなくなる危機”はそのまま日本経済の危機であり、重要な社会課題として共有されるべきものだ。
課題解決に向け、行政も本腰を入れ始めている。その際、重要になるのが「連携・協働」という考え方。物流事業者同士、あるいは荷主企業と物流事業者が連携できる部分は手を握り、限られた経営資源をシェアすることで有効活用していく発想だ。
トラック輸送業界ではいま、ドライバーという経営資源に限りが見える中で、輸送を共同化し、強みと弱みを補完し合う取り組みが本格化しつつある。その際、カギを握るのが、日本自動車ターミナルが東京都内4カ所で運営している「公共トラックターミナル」の存在だ。
「公共トラックターミナル」の存在価値
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「公共トラックターミナル」とは、トラック運送事業者が個別に保有する私有ターミナルとは違い、複数の事業者が広大な敷地内に“同居”するターミナルのこと。
その中で日本自動車ターミナルは、都内4カ所(大田区、板橋区、足立区、江戸川区)に公共トラックターミナルを運営しており、全国各地にあるトラックターミナル会社の象徴的な存在でもある。
商品や物資は日夜、全国各地を流通する。その長距離幹線輸送を主に担っているのが特積トラックと呼ばれる大手事業者。彼らが東京に荷物を輸送する場合、まず都内にあるトラックターミナルまで大型トラックで幹線輸送し、そこで荷物を積み替えて、集配トラックで都内各地に配送する。
つまり、公共トラックターミナルは全国各地と東京とを結ぶ結節点として重要な役割を果たしている。