春闘「4%賃上げ」見通しだが、物価・賃金“好循環”実現のハードルは高いPhoto:PIXTA

実質GDPは2四半期連続マイナス成長
消費など内需の鈍さが際立つ日本経済

 株式市場は東証平均株価が史上最高値を更新する活況だが、直近公表の2023年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.1%(年率▲0.4%)と2四半期連続のマイナス成長となった。

 一時的要因とみられるサービス輸出の大幅増加(産業財産権等使用料の受取)を割り引いて考えれば、景気の実態はさらに悪いとみるべきだろう。特に、個人消費・設備投資が3期連続で減少するなど、内需の弱い動きが続いている点は懸念材料だ(図表1)。

 個人消費については、実質賃金前年比マイナスの継続が下押し要因になっていることは間違いないだろう。23年は30年ぶりの高水準の賃上げが実現、またコロナ感染症の5類移行が消費や外出・旅行などを活発化させると期待する向きもあったわけだが、結果としては、インフレによる購買力の低下により追加的な消費余力が失われたことの影響が大きかったと言わざるを得ない。

 24年春闘の賃上げ率は4%程度と昨年より高い伸びとなり、実質賃金も年度後半にはプラス転化が見込まれるものの、消費回復には力不足で、経済の回復ペースは緩やかなものにとどまる公算が大きい。

 企業の価格設定行動に慎重姿勢が残る中、中小企業を中心に賃上げ余力も縮小することで25年に向け賃金も物価も上昇率は鈍化する見通しだ。

 政府や日本銀行は、賃金上昇が消費増につながり、企業の売り上げが増えてさらに賃金、物価が上がる「物価・賃金の好循環」を掲げているが、足元の日本経済の動向を踏まえると、「好循環」が実現するハードルは依然として高いように思われる。