2023年12月22日、山形市のハウスメーカー、クリエイト礼文(れもん)は、これまでに施工した約2800棟の一戸建て住宅について建築基準法違反があったと公表した。国土交通省と山形県は同社に対して再三、迅速な調査と是正を指導しているが遅々として進まず、施主たちが集団訴訟を起こす準備を進める事態にまで発展している。(保険ジャーナリスト 鬼塚眞子)
クリエイト礼文の住宅2822棟で発覚した
屋根裏の「一部施工不備」
今年、創立34年を迎えるクリエイト礼文(れもん。本社:山形県山形市)は、箱形で総二階建ての2×4(ツーバイフォー)工法を専門とするハウスメーカーだ。ユニテハウス(UNITE HOUSE)というブランド名で、青森県から沖縄県まで全国22カ所でフランチャイズ(FC)事業を展開するほか、建築事業や不動産事業(センチュリー21加盟店)、リゾート事業など幅広く手掛けている。
創業時は個人の不動産会社に過ぎなかったが、2022年3月期には売上高62億1162万円にまで成長した。その背景の一つは、「おしゃれな外観ながら毎月の支払いは家賃並み。1000万円台で購入できる新築マイホーム」と大々的にアピールしてきたことが挙げられる。
山形県特有の世帯構成も後押しした。山形県は2000年の国勢調査から5回連続で、3世代同居率が全国1位(20年10月1日時点)として知られる。最近では、同県の世帯年収は400万円前後と少ないながらも、独立世帯を望む若い世代も増え、「おしゃれだけど安い新築一戸建て」というフレーズが突き刺さった。
こうした世代を中心に山形県内では連続着工棟数ナンバーワンを14年以上も続け、全国放送で取り上げられるほど評判となった。勢いづいた同社は22年、山形市内のホテルで関係者や取引先など約160人を集め、22年を初年度とする中期経営計画を盛大に発表。24年3月期に売上高68億8000万円、同営業利益4億円を目指すと宣言した。
そんな同社に暗雲が垂れ込めたのが、“一部施工不備”の発覚だ。
施主からの申し出を受けて、23年9月に同社は山形県に対し、「山形県内で建築した木造建築物において、国土交通大臣の認定を受けた仕様を採用していたが、その認定に適合しない外壁の施工不備があった」と報告を行っている。
外壁の施工不備とは、屋根裏に断熱材と石こうボードを張り巡らせていなかったことだ。建築基準法では防火や延焼防止の観点から、延焼の恐れのある部分の外壁には防火性能が求められている。そのため、国交大臣認定の内容において、内部に断熱材と石こうボードを張るという規定がある。それにもかかわらず、山形県には「認識不足。考えが甘かった」と答えているという。
「報告を受けた時点では、被害件数が何件かは分からないものの施工不備が多数ある。他県にもまたがっているため国土交通省に9月27日に報告した」と、山形県の担当者は話す。そして施工不備の対象となる棟数が2822軒に上ると分かったのは、国交省に報告した後のことだ。
次ページでは、クリエイト礼文の施工不備の詳細に加え、複数の施主を取材した結果明らかとなった防火設備の不備、クリエイト礼文のあきれた対応について詳述していく。