うつ病は、誰でもかかる可能性がある病の一つです。治療の基盤となるのは、医師の診察、服薬、そして休養です。うつ病は、ゆっくりと改善するケースも多く、通院や服薬などの出費が続くこともあります。加えて、治療中は休職したり、労働時間が減ったりして、収入の減少が気になるかもしれません。そこで知っておきたいのが、公的な支援です。一体どんなものがあるのか詳しく見ていきましょう。(社会保険労務士 井戸美枝)
うつ病になったら、どうすればいい?
うつ病になった場合、どんな公的支援を受けることができるのでしょうか。公的支援にはいくつかあります。
●自立支援医療(医療費の自己負担額が少なくなる)
●障害年金(日常生活を送ることが困難になった場合に受け取れる)
●心身障害者医療費助成制度(半年以上治療を受け、所得が少なくなった場合に受け取れる)
●仕事が原因と認定されれば「労災保険による補償」の対象になる
ただ、これらの支援は、原則自分で申請する必要があります。詳しく内容を見ていきましょう。
「自立支援医療」自己負担が1割に
うつ病と診断されたら、まず利用したい制度が、「自立支援医療」です。
「自立支援医療」とは、精神科の通院にかかる治療費が軽減される制度(※1)。対象となる精神疾患は、「うつ病」の他にも、「統合失調症」「薬物などによる依存症」「パニック障害などの不安障害」「知的障害」「発達障害」「認知症」「てんかん」などがあります。
病院で支払う診療代や薬代は、原則3割負担ですが、「自立支援医療」が適用されれば、自己負担額はその1割になります(※2)。
※1 精神科の他にも、視聴覚障害や身体障害者手帳が交付されている肢体不自由なども対象となります。原則として、満18歳以上の方は「更生医療」、満18歳未満の方は「育成医療」の対象となります。
※2 入院の費用や、健康保険適用外の治療は対象外となります。
さらに、その自己負担額にも、月ごとの上限が設けられています。もともと自己負担額には、上限が定められていますが(高額療養費制度)、次の図の通り、所得や診断内容によっては、さらに低くなる可能性があります。
ただし、この「自立支援医療」を利用するためには、いくつかの条件があります。