同じ薬剤師でも、就職後の待遇は、職場や地域によって大きく異なっている。そして今、現場の薬剤師らによると、長年固定化されてきた序列に異変が起こり始めているという。特集『薬局・薬剤師 サバイバルダンス』(全24回)の#9では、薬剤師のリアルな給料事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)
大手グループより
1店舗のみの薬局の方が高待遇
医療業界は、他の業種よりも職種ごとのヒエラルキーが明確になっている。そして、それぞれ個別の職種内でも序列は存在している。
例えば医療業界のトップに君臨する医師の間では、診療科による厳然とした序列があり、内科系、外科系など全身を診る「メジャー科」が、眼科、耳鼻科、整形外科などの局所を診る「マイナー科」よりもパワーバランスが強いといわれている。
薬剤師の世界では、伝統的に働く場によって序列付けがされており、最も格が高いのは病院薬剤師だ。採用人数が少なく狭き門故に「昔から、偏差値の高い国立大学出身のエリートが行く職場というイメージ」(50代の男性薬剤師)。
では、序列が上である方がその分報酬も良く、働きやすいのかというと、実はそうとは限らない。
また、企業であれば一般的に大手企業の方が中小企業よりも給料は高いのだが、一方で、調剤(保険)薬局やドラッグストアに勤める管理薬剤師(現場責任者。一般企業における課長・係長クラスに当たる)の平均年収(2022年度)を薬局のグループ規模別に見ていくと、一般企業とは真逆の実態であることが分かる。
300店舗以上の規模で695万1901円、200~299店舗で672万9892円、100~199店舗で714万9077円、50~99店舗で651万7121円、20~49店舗で669万5768円、6~19店舗で688万円、2~5店舗で805万2061円。1店舗のみの薬局だと933万1192円(厚生労働省「医療経済実態調査」)と1000万円近くに達し、同じ管理薬剤師でも、大規模な薬局グループより、2~5店舗の薬局、1店舗のみといった小規模な勤務先の方が年収が高かった。
外界の常識からは計り知ることができない薬剤師たちの給料事情とはいかなるものなのか。次ページでは、代表的な就職先の年収モデル、職場環境について、現場の薬剤師や転職エージェントらへの取材を基にひもといていこう。