賃上げの嘘!本当の給料と出世#2Photo:PIXTA

サントリーホールディングスは2024年春、1万3000円のベースアップと定期昇給の組み合わせで平均約7%の賃上げに踏み切った。一方で、賃上げと同時に進めたのが「新給与テーブルへの移行」である。結果、基本給が引き下げられる社員も存在し、全社員が大幅な賃上げとなったわけではない。どの世代、どの役職が、どれほど割を食うのか?特集『賃上げの嘘!本当の給料と出世』の#2では、新給与テーブルの給料実額と、その裏に見え隠れするサントリーの“焦り”を詳報する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

ビール3社は軒並み
1万3000円以上のベースアップ

 2024年4月、経済同友会代表幹事の新浪剛史氏は世間を「賃上げの春」と評した。同氏は昨年秋から経済同友会のトップとして、賃上げがマイナス金利解除の重要なファクターになると訴えており、大手企業を皮切りに賃上げの波が広がったのだ。

 その新浪氏自身が代表取締役社長を務めるサントリーホールディングスでも、24年春、月額1万3000円のベースアップを行い、定期昇給を含めて約7%の賃上げに踏み切っている。中でも、新卒者の引き上げ幅は3万6000円とかなり大きい。

 背景には、アフターコロナの人流回復と23年10月に行われた酒税改正によって、ビール業界の業績が軒並み上向いたことがある。

 23年12月期の決算では、アサヒグループホールディングスの営業利益は前年比12.9%増の2450億円、キリンホールディングスの事業利益は前年比5.4%増の2015億円、サントリーホールディングスの営業利益は前年比14.7%増の3172億円となった。

 結果、サントリーだけではなく、アサヒビールは月額1万3500円、キリンホールディングスは月額1万3000円のベースアップと、業界全体で大幅な賃上げが目立っている。

 しかし、甘い話だけではない。サントリー社員には“アメとムチ”ともいえる変化が押し寄せているのだ。

 実は、サントリーホールディングスではベースアップと同時に新給与テーブルへの移行が進んでいる。内部資料には「三菱商事やソニー、パナソニックや武田薬品をベンチマークにした」と記載されているから、かなりの上昇といえよう。

 ただし、主にバブル世代や氷河期世代を中心に、条件によっては基本給が下がる可能性もある。また、その下の中堅や若手世代の待遇も激変していく。

 なぜ、シンプルな賃上げだけではなく、同時に人事制度全体にメスを入れようとしているのか。その裏には、同社が“転換点”に差し掛かっていることと、ビール業界全体が抱える問題がある。

 どの世代、どの役職の給料が、どんな条件で上がる、あるいは下がるのだろうか。次ページでは、ダイヤモンド編集部が入手したサントリーホールディングス新給与テーブルの詳細な給料実額と、見え隠れする同社の“焦り”を明らかにする。