【社説】人民元安、恐れるべきでないPhoto:Anton Petrus/gettyimages

 今度は中国人民元の番だ。最近の重要な経済動向として、ドルに対するアジア通貨安が挙げられる。中国政府が何らかの通貨安競争を実行している、あるいは今後そうするだろうか。それが貿易戦争の口実になるだろうか。そうした問いを巡って新たな臆測がある中で、人民元が再び注目の的になっている。

 最初の問いへの手短な答えは「ノー」のようだ。オンショア取引、すなわち中国政府が一定範囲内で為替相場を管理している本土市場では、大幅な元安・ドル高となっている。元相場は26日に1ドル=7.27元と7カ月ぶりの安値を付け、5カ月連続で下げている。これは中国政府による統制が弱いオフショア市場での元安と同時進行で起きており、オフショア市場では26日に1ドル=7.30元近辺まで下落した。

 中国は、オンショア人民元の中間値(基準値)が元安方向に動けるような変動幅を設定し、若干の元安を容認している。だがこれは、米国の「通商タカ派」がよく主張するような、輸出市場での競争力を高める意図的な戦略だとは言い難い。オンショア人民元は中国政府が設定した許容変動幅の下限に張り付いており、中国政府は、より大幅な元安を求める声に抵抗し続けている。