しかしながら、アベノミクス期間(2013年から2020年)に限っても、日本の名目GDP(カッコ内はドルベースの名目GDP)は、508.7兆円(5.2兆ドル)から539.8兆円(5.1兆ドル)にしか増えず、ひとり当たりGDP(USドル)も世界27位から世界24位と低迷している。1人当たり労働生産性からみても2022年の統計(ILO)で、世界で45位と生産性の落ち込みも相当に激しい。2024年には、GDPの指標でドイツに抜かれ、世界第4位に転落したことも記憶に新しい。残念ながら新たな産業、日本の食い扶持を育てることが達成できなかった。

この壮大なる失敗を
認めなければならない

 金融は経済の血液であって、お金をぐるぐる回転させることで新陳代謝を行う。役割を終えた産業分野は退場し、新たな細胞がからだ全体を活性化していく。そのために銀行があり株式市場、債券市場があるはずだ。

 しかし、バブル崩壊以降、永きにわたって民間は元気を取り戻すことができないでいる。そこで、国が国民に代わって多額の借金をして巨額の国家予算を作り、需要をつくって経済を下支えしつつ新たな産業を生み育てようとしてきたわけだ。何よりお金を循環させることが重要と考え、国家が人工的に実行してきた施策であったはずだ。しかし、それも少なくとも20年以上、うまくいっていないことが誰の目にも明らかになったのではないか。

 しかも少子高齢化を止めるどころか減速することすら叶わなかった。

この20年で、出生率は1.43から1.33になり、1年で赤ちゃんは約84万人(2020年出生数)しか生まれてこない。約35万人も減ってしまった。3年でさらに8万人ほども減少し、出生数は75万8631人(2023年)となった。国力が衰えるのも当然だ。

「話にならない」「ウチのデスク連中ですら…」日経新聞の編集幹部が嘆いたワケ『文藝春秋と政権構想』(鈴木洋嗣、講談社)

 この壮大なる失敗を率直に認めなければならないのではないか。財政に大穴を空けながら民間からおカネを吸い上げ様々な投資促進をしたにもかかわらず、新たな産業を興すことができなかった。そのうえ、人口も減ってしまった。それは、この仕組みそのものが構造的に無理だったのか。あるいは個々の経済・産業政策の方法論が間違ったのか。そこをいま一度徹底的に検証する必要があると考える。

 アベノミクスは修正しなければならない。

 金利を上げることで、果たして金融正常化ができるのか。その大命題が問われている。